FOXニュースの番組「タッカー・カールソン・トゥナイト」収録中のタッカー・カールソン氏(画像:Aleksandr Dyskin / Shutterstock.com)

《ニュース》

米FOXニュースは24日(米現地時間)、高視聴率ニュース番組「タッカー・カールソン・トゥナイト」のホストであるタッカー・カールソン氏が即日退社することを発表しました。事実上の解雇であると見られています。

発表後、FOXニュースの親会社「フォックス・コーポレーション」の株価は一時5.4%下がり、時価総額5億700万ドル(約766億円)が吹き飛びました。その後、2.9%安で取引を終えました。

《詳細》

FOXニュースは、「FOXニュースとタッカー・カールソン氏は、別々の道を行くことで合意した。司会者として、それ以前は協力者として、当社に貢献してくれたことに感謝している」という短い声明を発表しました。関係を解消した理由は明らかにせず、21日の放送分が同氏の登場する最終回になったと述べました。

カールソン氏の番組は、1回の平均的な視聴者数が300万人以上で、保守派の視聴者に絶大な人気を誇っていただけでなく、アメリカの政治にも大きな影響力を持っていました。またトランプ前大統領を支持していたことでも知られ、最近は自身の番組で2021年1月の連邦議会議事堂襲撃事件に関する未公開映像を放送。議事堂に押し入ったのは概ね平和的な愛国者だったと指摘し、この映像は「民主党が嘘をついていたことを証明する決定的な証拠だ」などと指摘していました。

一方で、FOXニュースは、「2020年の米大統領選で投票の集計結果を不正に操作した」というカールソン氏らの報道で名誉を毀損されたとして、米投票集計機メーカー「ドミニオン・ボーティング・システムズ」に訴えられ、7億8750万ドル(約1060億円)を支払うことで18日に和解したばかりでした。

訴状は、カールソン氏などの番組司会者らが、トランプ氏の元顧問弁護士ルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長やトランプ陣営の元代理人シドニー・パウエル弁護士などのゲストに、ドミニオンがコンピューターアルゴリズムを使ってトランプ氏からバイデン氏に票を移していたとする発言を繰り返す場を提供したと、指摘していました。

米ブルームバーグなどは、フォックス・コーポレーションのラクラン・マードックCEOとFOXニュースのスザンヌ・スコットCEOが、21日夜にカールソン氏の降板を決め、カールソン氏に電話をかけたと報じています。

25日14時時点(日本時間)で、カールソン氏の去就は明らかになっていませんが、他のネットワークはすでにカールソン氏にアプローチを始めています。保守系メディア「ニュースマックス」や「ワン・アメリカ・ニュース・ネットワーク(OANN)」のCEOは、カールソン氏との話し合いを望んでいることを表明しています。

カールソン氏は各界からの圧力に負けず、良心に従って真実を報じ続ける数少ない保守系ジャーナリストであるように見えます。SNSには、「タッカーについていく」というファンからの声が溢れています。FOXニュースの退社は残念ですが、またすぐにジャーナリストとして活躍する姿を見せてくれることでしょう。

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