《本記事のポイント》

  • なぜアメリカは北朝鮮の終末を警告するのか?
  • アメリカが語気を強めるのはブラフではない
  • 進む世界の分断と日本のとるべき道

元航空自衛官

河田 成治

河田 成治
プロフィール
(かわだ・せいじ)1967年、岐阜県生まれ。防衛大学校を卒業後、航空自衛隊にパイロットとして従事。現在は、ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)の未来創造学部で、安全保障や国際政治学を教えている。

前編では、北朝鮮が核を使用した場合、電磁パルス攻撃により、電気を利用したすべての機能が麻痺状態に陥る危険があることなどについて、説明をしました。後編では、アメリカがどのような対北政策を持っているかについてお話ししていきます。

なぜアメリカは北朝鮮の終末を警告するのか?

アメリカと韓国は2023年2月22日、米ワシントンで、北朝鮮の核攻撃に対抗する机上演習(8th U.S.-ROK Deterrence Strategy Committee Table-Top Exercise, DSC TTX)を実施しました。

演習を受けて翌23日、米防総省は、「北朝鮮のいかなる核兵器に対しても的確に反撃する様々な選択肢について議論した」と述べ、さらに「北朝鮮の核の脅威に対抗する準備ができている」「北朝鮮がアメリカや同盟国に対して核攻撃すれば、金正恩体制は終焉(the end of that regime)する」と声明で強調しました。

「北朝鮮の体制の終末」という表現は、昨年10月のアメリカの核戦略に関する文書「核態勢の見直し(NPR)」で語られていたものですが、今回も同様に繰り返すことで、アメリカの決意は固いことを示したものと考えます。

アメリカが語気を強めるのはブラフではない

以前本欄で、アメリカが北朝鮮を先制攻撃すれば、返り血を浴びて、韓国のソウルなどで数十万に上る死傷者が出る恐れがあるため、過去アメリカは北朝鮮の核施設への攻撃を断念してきたことを述べました(関連記事「北朝鮮の核の脅威から目を離してはならない(後編)【HSU河田成治氏寄稿】」参照)。

それにもかかわらず、アメリカが「北朝鮮を終わらせる」と語気を強めるのは、単にブラフではないという見方があります。

韓国の大手紙「朝鮮日報」などは、ワシントン事情に詳しい外交消息筋の話として、「最近の科学技術の進展で、これらの問題が相当部分解決されたという判断が作用した結果だ」と報じています。

その科学技術の進展とは、監視・偵察能力の飛躍的向上により、北朝鮮の移動式ミサイルの常時監視が可能になったこと、また要塞化された地下施設に対してもピンポイントで確実に破壊できる低出力核ミサイルによる攻撃が可能になったことを指す、と述べています。

要約すれば、日本や韓国が無傷の状態で、北朝鮮を崩壊させられる技術の飛躍的な進展があったということになります。

きな臭さを増す世界情勢

以上のようにアメリカによる北朝鮮への軍事攻撃は、現実味を帯びてきました。

しかし、シナリオは複数の要因が影響し合い、そんなにシンプルではありません。北朝鮮の動きと共に、ウクライナ戦争の長期化、台湾・中東問題における紛争が複合的に発生する可能性が高いからです。

先日、衝撃的なニュースがありました。それは中国の仲介により、イランとサウジアラビアが今後2カ月以内に外交関係を正常化させることに合意し、三カ国の共同声明が北京から発表されたことです。

これまで中東はアメリカの影響下にありました。トランプ大統領の時代にはイスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)などが歴史的に和解。アメリカ主導の中東和平が進んだために、トランプ氏はノーベル平和賞の候補者にもなりました。

しかしバイデン大統領になってから、米・サウジ関係は急速に冷え込み、アメリカの影響力の低下が危惧されていました。中国の仲介によるイラン・サウジ関係の劇的な改善は、中東地域における中国のプレゼンス(パワーと影響力)が激増する一方、アメリカの凋落を世界的に見せつけるものとなりました。

中国の仲介によるサウジ・イラン間の和解は日本の国難となる

中国の仲介による和解は、サウジ・イラン間にとどまらないようです。

米ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、中国の習近平国家主席は、アラブ諸国やイランとの首脳会議開催を提案しており、今年中にイランを交えた史上初の中東諸国の首脳会議を北京で開く予定だとのことです。

今後中国は、アラブ諸国全体とイランとの関係改善を主導していく方針なのでしょう。アメリカに替わって中国が中東でプレゼンスを増すのを目指していることは明らかです。

その影響は多岐にわたりますが、日本として危機的であるのは、中東の石油を中国に握られるということでしょう。

日本は石油の9割を中東に依存していますので、中国の顔色を伺わなければ石油が入ってこないという悪夢が現実化する可能性が出てきたのです。

一方で日本は、ウクライナ戦争を機縁として、ロシアとも敵対関係に入ったため、世界3位のロシア産石油の輸入に道を開くことも困難な状況です。

進む世界の分断と日本のとるべき道

さらに習近平氏は、今月20日からロシアを訪問し、プーチン大統領と会談する予定です。アメリカがロシアを敵に回し、中東でも失策を続ける中、確実に露中の連携が進み、中東全体が露中の枠組みの中に組み込まれていく道筋が明確になってきました。

世界は、バイデンに引きずられる西側諸国と反米側諸国とに分断される方向に進んでいるのです。

したがって、ボタンをひとつ掛け違えるだけで世界は混乱し、世界大戦へと拡大する恐れが高まります。

だからこそ、軍事的対決による北朝鮮の武装解除ではなく、外交努力により絡まった糸をほどいていくべきだと考えます。

北朝鮮が強気であるのは、ロシアと中国の支援があるからです。ロシアが北朝鮮を支援し、中国と接近するのは、アメリカがロシアを追い詰め、ウクライナ戦争に異常なほどの肩入れをしてきたからです。

日本政府は北朝鮮のミサイルを迎撃し、悪は絶対に許さないという正義を示すべきです。

しかし同時に、アメリカにも全体主義国家・中国が本来の敵であり、ロシア敵視政策の愚かさを示すことです。大国としての責任ある立場をとるべきです。

今、未曾有の危機が世界に迫っているからこそ、地球全体で求められる「神の正義とは何か」、「人類の幸福とは何か」を、虚心坦懐に探究すべき時ではないでしょうか。

恐れるべきは世界大戦であり、核戦争であり、世界の破滅です。そして、それは政府だけの責任ではありません。私たち日本国民も一人ひとりが、世界を平和に、美しくする責任を担っていることを自覚して、声を上げていくべきなのです。


HSU未来創造学部では、仏法真理と神の正義を柱としつつ、今回の北朝鮮情勢などの生きた専門知識を授業で学び、「国際政治のあるべき姿」への視点を養っています。詳しくはこちらをご覧ください(未来創造学部ホームページ )。

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