《本記事のポイント》

  • 北朝鮮は中国・ロシアと準軍事同盟化している!?
  • 電磁パルス(EMP)攻撃の危機が迫っている
  • 自衛隊はなぜ北朝鮮のミサイルを撃ち落とさないのか?

元航空自衛官

河田 成治

河田 成治
プロフィール
(かわだ・せいじ)1967年、岐阜県生まれ。防衛大学校を卒業後、航空自衛隊にパイロットとして従事。現在は、ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)の未来創造学部で、安全保障や国際政治学を教えている。

北朝鮮はミサイル発射と開発を加速させています。特に、迎撃が困難な極超音速ミサイルや、アメリカ本土に到達可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射も繰り返しており、核兵器・化学兵器・生物兵器の脅威は増すばかりです。

北朝鮮は先月2月18日、ICBM「火星15号」を発射、北海道の西方の排他的経済水域(EEZ)に着弾させました。

その際、防衛省は、緊急発進したF15戦闘機が着弾地点の上空付近で撮影した動画を公開。そこには火の玉のような閃光が写っており、弾頭が再突入する際の様子が見て取れました。

これに対抗して米韓両軍は19日、韓国上空で戦略爆撃機や戦闘機を投入した合同訓練を実施し、日米韓3カ国も22日、日本海で共同訓練を行いました。

ただ日本政府そのものは、官房長官が「断じて容認できない」「北朝鮮に対して厳重に抗議した」と、従来通りの言葉を繰り返すばかりで、国連安全保障理事会(安保理)に訴えることしか策を持っていないようです。

しかしウクライナ戦争以降、ロシアと中国は北朝鮮を擁護する側に回っており、安保理の対北朝鮮制裁は機能していません。昨今の北のミサイル発射回数の記録的な数を見ても、経済制裁がほとんど効果を発揮していないことが分かります。日本政府がそれを理解していないはずはありません。

北朝鮮は中国・ロシアと準軍事同盟化している!?

むしろ北朝鮮は、中国やロシアとの関係を強化し、ロシアとは準軍事同盟関係に入ったとみるべきでしょう。すでに各種のメディアが報じているとおり、北朝鮮からロシアに向けて輸送用コンテナを積んだ鉄道車両の衛星画像が公開されており、「数百万発」の砲弾やロケット弾などがロシアへ提供されたと見られています。今後ミサイルなどもロシアに供与される可能性さえあります。

一方、日米韓は、北朝鮮のミサイル発射に対応して軍事演習を行ってアピールしていますが、軍事演習をすればするほど、北朝鮮の態度を硬化させるだけになっており、金正恩氏の「獰猛さ」がますます顕著になっています。

これは「安全保障のジレンマ」そのものです。自国の防衛のためにとった措置がかえって相手の軍事力の強化を招き、より危険な状態に陥ることがあるのです。

今必要なのは単に北朝鮮を口頭で非難することでも、バイデン政権に振り回されて軍事演習を見せつけることでもないでしょう。

電磁パルス(EMP)攻撃の危機が迫っている

先ほどお話しした2月18日に行われたICBMの発射は、日本のEEZ内に撃ち込まれたにもかかわらず、今回も自衛隊はミサイルを撃ち落とす迎撃をしませんでした。

では、日本の領土に落下せず、日本海や日本を飛び越えて太平洋に着弾するミサイルなら、危険ではないのでしょう?

核兵器の使い方の一つに、電磁パルス(EMP)攻撃があります。これは地表のはるか上空で核爆発を起こし、その時に生じる強力な電磁パルスで、電子機器の損傷・破壊を狙う攻撃です。

北朝鮮が発射したミサイルに核弾頭が搭載されており、上空で爆発したなら、この強力な電磁パルスにより、地上の様々な電子機器が損傷・破壊されます。上空30kmで核爆発が起きれば、半径約600kmに渡って電子機器等が破壊されるというアメリカの分析もあります。

実際に過去の核実験の例では、1962年にソ連が上空290kmで核を爆発させた際、送電線の東西550kmの間にわたり増幅器の防護装置がすべて破壊され、かつ発電所が火災を起こしました。

アメリカでは1962年、太平洋上空400kmで核弾頭を爆発させた際、約1300kmも離れたハワイ全域の無線・電話が不通となったほか、オアフ島の照明用変圧器も焼損し、30本の街灯すべてが停電しました。

では日本がEMP攻撃を受けた場合、どのような事態が起きるのでしょうか?

日本のあるシンクタンクは、電力インフラ、情報・通信、交通、金融、医療、上下水道、建造物の維持管理など、電気を利用したすべてのシステムが損壊・破壊するというシナリオを発表しています。

これは政府や自治体等の業務システム、自衛隊の指揮・統制・運用システム、警察などの犯罪捜査システムなどのコンピュータネットワークシステムが損壊・破壊されることを意味します。国の全活動が麻痺状態に陥り大混乱が生じるのです。

在日米軍は電磁パルスに対する対策を取っていますが、基地の電力や上下水道などのインフラは日本のシステムに依存していますので、自家発電機が作動する範囲内でしか米軍も機能しなくなると思われます。

日本はかつてないほど核ミサイルの脅威にさらされています。それにもかかわらず北朝鮮がミサイルを発射しても、日本の領海や領土に向けて攻撃されない限り、ミサイル防衛はしないのでしょうか。

北朝鮮が日本海に向けてICBMを発射したからと言って、ミサイルの搭載物やその意図が分からない以上、単なる実験として見過ごすべきではありません。日本周辺に飛来するミサイルはすべて迎撃、破壊すべきだと思います。

自衛隊はなぜ北朝鮮のミサイルを撃ち落とさないのか?

では、なぜ自衛隊は北朝鮮のミサイルを撃ち落とさないのでしょうか? あくまで私の推測ですが、いくつかの理由があると考えられます。

一つは、イージス艦から発射する迎撃ミサイルSM-3は、落ちてくる北朝鮮のミサイルに対して、百発百中ではないことです。そのため1発のミサイルに対して複数のSM-3を発射した場合、今回のICBMのように極めて高速かつ高い角度から落ちてくるミサイルの迎撃はたいへん難しいと思われます。従って「外したらまずい」という心理が働いている可能性があります。

もう一つは憲法9条の縛りでしょう。ただそれを言い訳として、本音は「事を荒立てたくない」という弱さが見え隠れします。

金正恩氏の「獰猛さ」に対し、それが「悪」だと立場を明確に出来ないのでは、優柔不断の誹りを免れません。むしろ有事に備えて、勇気ある判断を下していくべきでしょう。

領土領海内でなくても、EEZ内で核弾頭が爆発するなら、電磁パルスによる効果で多大な被害を受ける可能性があります。危険を排除するために撃ち落とすのは、我が国の自衛として当然の権利です。

そしてもし万一、SM-3を外すようなら、迎撃ミサイルの改良や運用の改善を急いで迎撃精度を上げる努力をすべきです。

何もしないでこのままの北朝鮮の推移を見守る立場をとるなら、数年以内に核が使われる可能性を高めることになります。

核が使用されれば、以前のこの欄で記したように、日本や韓国が多大な被害を受けますが、同時に北朝鮮の崩壊をも意味するでしょう。あるいはその事態が切迫するだけで、北朝鮮は終末を迎える可能性すらあります。これについては後編でお話ししていきます。 (関連記事「北朝鮮の核の脅威から目を離してはならない(後編)参照)

(後編に続く)

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