2011年7月号記事

9条をめぐっては賛否の分かれる日本国憲法だが、仮にも憲法と言えば一国の最高法規。本来、何としても守らなければならないものだ。そんな護憲の立場に立ってみると、現代日本には正すべき違憲問題が数多くあることが分かる。

(1)一票の格差

違憲問題としてよく知られているのが「一票の格差」だ。昨年7月に行われた参院選の「一票の格差」をめぐっては、年末から「違憲」「違憲状態」とする判決が全国で相次いでいる。

参院選では、議員一人当たりの有権者数を都道府県別に比べた場合、最多の神奈川県は121万5760人で、24万2956人で最少だった鳥取県の約5倍にもなった。鳥取県の1票あたりの投票価値が1票とすると、神奈川県では0・2票しかないことになる。

つまり、鳥取県で出馬したほうが、1票の価値が高く、より少ない票数で当選できるので有利となるのだ。

総務省の試算によると、衆院小選挙区でも最大2・5倍の格差が生じる。衆院議員選挙区画定審議会設置法では、1票の格差が2倍以上にならないことを基本と定めているが、2倍を超える選挙区も全選挙区の約3分の1の97選挙区に上るという。

だが、住んでいる場所によって1票の重さが異なるのであれば、当然、各人が「法の下に平等」(憲法第14条1項)であるとは言えない。

「投票における一人1票」こそが、国民一人ひとりの平等と政治参加の自由を保障しているのであり、民主主義の基盤となっている。だからこそ、早急な格差是正が求められるのだが、選挙制度改革は遅々として進んでいない。

結果、若者がほとんど投票に行かないことも相まって、過疎化している地方の高齢者の声だけがますます大きくなり、政府の政策形成や資金配分で地方への偏りが生じている。民主党政権の農家への戸別所得補償はまさにその典型だろう。

(2)農業の参入規制

だが、農業はそうした補償では活性化しない。主な問題は、農業への参入規制が強く、個人や株式会社の新規参入が難しいことだ。

09年に施行された改正農地法では、「農地はその耕作者みずからが所有すること」という耕作者主義をやめたものの、株式会社が農業に参入する際には賃貸でしか土地を得られない。

しかも、その農地の利用状況について、地元の農家から選ばれた農業委員会に報告しなければならないため、その経営が認められなければ許可が取り消される。つまり、周りの農家とうまくいかなければ追い出されるということだ。

さらに、リースの場合には、所有者から「返してくれ」と言われれば農地を返さざるを得ないので、農業者はきわめて不安定な地位に置かれてしまう。これでは、怖くて農業に参入できない。

また、農業生産法人を設立すれば、農地を所有して参入することも可能だが、構成員の4分の3が農業関係者、役員の過半数が農業の常時従業者でなければならず、結局農家しかなれない構造だ。

その一方で、農家の子弟であれば、たとえ郷里を離れていようと、農業に関心がなかろうと、相続で農地は自動的に取得できる。

これでは農家以外の人が農地を取得して農業を営むことができないことになり、憲法第22条1項の「職業選択の自由」、第14条1項の「法の下の平等」に反していると言えよう。

農業の担い手不足を解消するには、農地の所有に流動性を持たせ、新たに農家になる自由を与えなければならないのだ。