今回は、日本ではあまり報道されていない軍事関係のニュースを紹介する。

米国防総省のダニエル・ホカンソン州兵総局長はこのほど、米州兵と各国軍との連携訓練プログラム(National Guard's State Partnership Program/SPP)を、対中政策のためにアジア方面(インド太平洋地域)で拡大することを検討していることを明らかにした。

SPPは州兵総局の運営の下、25年以上にわたって続けられてきたもので、現在、世界93カ国と85のパートナーシップを結んでいる。例えばカリフォルニア州兵がウクライナ軍と連携するなど、さまざまな米州兵が93カ国の軍隊に訓練を施してきた。

ただ、SPPはもともとロシア対策で始まったものであるため、アジア方面は手薄になっていた(下のマップ参照)。日本とも連携していない。

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今年1月時点のパートナー国。日本をはじめ中国周辺が手薄であることが分かる(画像は米国防総省の国防メディア本部(DMA)ホームページより)。

ホカンソン氏は米軍事メディアに対し、現在検討中のトップ10のうち、おそらく5つはインド太平洋地域になると指摘。「ご存知の通り、現時点でとても重要な戦域だ」と語っている(7月26日付ディフェンス・ワン)。同氏が中国の脅威について十分理解していることが伺える。

詳細は明らかにされていないが、日本や台湾との連携が検討されている可能性もある。

映画「トップガン」さながらの軍艦破壊訓練

また、米海軍主催の多国間海上訓練「環太平洋合同訓練(リムパック)」がハワイ沖などで6月29日から8月4日までの日程で行われている。日本やオーストラリア、イギリスなど26カ国が参加し、中国の脅威に対処する姿勢を示している。

そんな中、米国防総省の視覚情報配信サービス(DVIDS)が7月26日、日米合同の軍艦破壊訓練(SINKEX)の動画を公開した。大ヒットを記録したトム・クルーズ主演映画「トップガン マーヴェリック」さながらの大迫力の映像だが、日本ではほとんど話題になっていない。

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画像:米国防総省の視覚情報配信サービス(DVIDS)のホームページの動画よりキャプチャー。

米国防総省によると、日米の空・陸・海の部隊が、廃船となったオースチン級ドック型輸送揚陸艦をカウアイ島の北約93キロメートル、水深約4.6キロメートル以上の海域で沈没させた。これは多国籍の統合任務部隊が監督・調整する中で行われたという。

陸上からは、陸上自衛隊とアメリカ陸軍が12式地対艦ミサイルと高機動砲ロケットシステム(HIMARS)を発射し、連携を確認。空からは、米海軍のF/A-18F「スーパーホーネット」が長距離対艦ミサイルを発射した。ちなみに、映画「トップガン マーヴェリック」で主人公たちが搭乗したのもF/A-18E/F「スーパーホーネット」だ(※Eは1人乗り、Fは2人乗り)。

米陸軍のAH-64アパッチヘリコプターは空対地ミサイルなどを発射し、米海兵隊のF/A-18C/D「ホーネット」は、空対地巡航ミサイルや空対地対放射ミサイルなどを発射。最後に海上から、米海軍の誘導ミサイル駆逐艦がMk45 5インチ砲を発射したという。

秋から冬に世界情勢が大きく変化する可能性も

中国共産党大会は11月に開催される見込みとなっているが、米ワシントンでは、習近平国家主席が3期目入りを実現するために、2つの見方が浮上している。「11月までは台湾侵攻などの動きは控え、その後に大きな動きがあるのではないか」とする説と、「経済や不動産、人口動態、コロナなどの面で中国は停滞しているため、一定の外交的・軍事的成果を上げるべく、何らかの行動を起こすのではないか」とする説だ。

台湾問題については、ナンシー・ペロシ下院議長が8月のアジア歴訪で台湾を訪問するか注目されており、米中間の緊張は高まっている。バイデン大統領も台湾の重要性について繰り返してきたが、バイデン政権と中国が台湾を譲れないと考える最大の理由は、半導体の供給網確保のためだと見られている。これは中国専門家の識者や研究者、財界では共通認識だろう (関連記事参照)。

11月はアメリカの中間選挙と中国の党大会が重なっており、またウクライナ情勢もゼレンスキー大統領が年末までの終戦を希望しているため、秋から冬に向けて世界情勢が大きく変化する可能性が指摘されている。

(ワシントン在住 N・S)

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