「言いたいことが伝わらない」「相手の反応が冷たい」など、コミュニケーションで苦労したことはないだろうか。そんな時に鍵を握るのは、話を聴くことによる、相手の心を開くパワーだ。「聴くパワー」によって仕事の成果につなげていく方法について、伊勢丹など高級百貨店などに店舗を持ち、リピート率7割を誇る高級婦人服ブランド店「レリアン」で活躍した大ナギ勝氏に話を聴いた(2015年7月号記事より再掲。内容や肩書きなどは当時のもの)。

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もっと良い提案をしたいから聴いています

株式会社ムービングオフィ
代表取締役

大ナギ 勝

(おおなぎ・まさる)1982年青山学院大学法学部卒業後、高級婦人服ブランドを日本一売る(株)レリアンに入社。600億円を扱うトップクラスのバイヤー兼MDとして活躍。営業部では150店舗以上を担当。2013年、接客・販売の楽しさを伝えるべく独立。

私は、高級婦人服ブランド店「レリアン」で、営業や接客に携わってきました。その中で、リピーターになっていただく鍵は、話を聴くことにあると肌で感じてきました。

次の提案をするために覚える

店舗では、お越し頂いたお客様にまず、「いらっしゃいませ」でなく、「おはようございます」などと挨拶しています。こうすれば、お客様も「おはようございます」と返事がしやすく、会話が続きやすいからです。そして「素敵なジャケットをお召しですね」などと服や小物の良いところを褒め、会話を進めます。相手に関心を持ち、興味や好みを覚えようと意識して聴くと、何気ない話でも家族構成や趣味などが印象に残ります。

特に、名前を聞いたら必ず覚えます。買うつもりではなく、話だけをしに来られるお客様もいらっしゃいますが、その場合も商品を勧めずに話を聴きます。そして、二度目に来られた時に、名前をお呼びするととても喜ばれます。お付き合いが深まり、お客様から商品の説明を求められた時にはじめて、商品を勧めるのです。

また、以前に購入されたものや「半年後に娘の結婚式がある」など聴いた話をメモするなりして覚えていれば、次の機会に商品の提案もできます。

自分でも何が欲しいのか明確ではない方も多いので、相手の生活環境や趣味、予定を踏まえてお勧めできれば、「売らんかな」の店員でなく、「私のことを考えてくれる」スタイリストになれます。つくづく、よく聴くことは大切だと思います。

話を聴けない人は接客を受けてみる

商品の説明に一生懸命になりがちでお客様の話を聴けない人は、自分が正しいと思いこんで相手の話をすぐ、打ち返してしまいます。しかし、一を聞いて十を分かったつもりで返しても、聞いていただけません。

一方的に話しがちの人は、客として色々な店に行くとよいと思います。お勧めばかりされる接客と話を聴いてくれる接客の両方を受けてみると、話を聴いてくれる店員に心地よさを感じるはずです。

人の素晴らしさに感動する

結局、お客様に興味を持ち、好きになることが大事なのだと思います。自分が客の立場なら、好きな店に自分のことも好きになってほしいと思うはずです。

私も普段から人が大好きです。学生からご年配の方まで、人の良いところに目が行きますし、素敵だと思う言葉をメモすることもあります。人の素晴らしさに関心を持ち、感動することが、話を聴くときに大切なマインドだと思います。(談)

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2015年7月号 人の心を開く 聴くパワー

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