多くの国の利害が複雑に絡み合う中東情勢は、日本人にとってわかりにくい面が多い。TIME誌5月9日号に載っているエッセーから最近の中東情勢のポイントをいくつか拾ってみたい。筆者は同誌の編集長補佐で国際ビジネス分野に詳しいラナ・フォルーハー。

・オバマ政権はアフガン戦争を平和裏に終わらせるための計画として、タリバンとの対話にサウジアラビアやアラブ首長国連邦などを巻き込もうと考えていたが、それが実現する公算は低くなった。理由は、イランとサウジアラビアの間の冷戦(a cold war)のためである。

・イスラム教スンニ派であるサウジ政権とシーア派イランの間の緊張関係は、アフガン和平ばかりか「アラブの春」にとっても脅威となるかもしれない。サウジはシーア派の国々の側に包囲されている感を強めている。イラクのシーア派政権、イランの主要同盟国であるシリア、サウジと長い国境を共有するイエメンなどだ。

・サウジは、イランがイエメンやバーレーンの反体制運動を扇動したと考えている。バーレーンは小国だが、湾岸地域や東アフリカを担当する米第五艦隊の司令部が置かれており、世界の石油供給量の5分の1が毎日通過する地政学上の要衝地だ。この地で緊張が高まると石油価格が上昇する。

・石油価格が上がるとサウジなど湾岸産油国の経済は潤うので、政治経済体制に関する市民の不満が抑えられ、これらの国にアラブ革命の波が及ぶことは考えにくくなる。一方、オイルマネーと縁がないエジプト、ヨルダン、レバノン、チュニジアなどでは石油価格の上昇は不景気につながり、失業者が増加して革命に結びつく。

・オバマ政権は、イランとサウジの冷戦ではサウジの側に立っている。大きな理由は、イランが影響力を高め核兵器を手にすることを米政府が非常に恐れているからだ。とはいえ、米国がアフガン戦争を終わらせるためには、アフガンと国境を接し文化や歴史も共有するイランを、アフガンとの対話に巻き込むことも考えるべきだ。湾岸地域の冷戦がアフガンに波及しないことを望みたい。

整理すると、カギを握るのはイランの存在だ。まず、湾岸産油国との対立関係と原油価格の問題において。また、米国がアフガン戦争を終結させる上でのアフガンの隣国として。さらに、記事には明示されていないが、米国と密接な関係にあるイスラエルとの敵対関係において。日本にとってもエネルギーの石油依存問題との絡みで、中東情勢は無関係ではない。震災からの復興に国を挙げて取り組みつつ、中東情勢も押さえておきたい。(司)

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