孔子の『論語』とドラッカーの経営論で会社を立て直した経営者であり、作家でもある一条真也さんに、読書が人生に与える影響について聞いた(2015年9月号記事より再掲。内容や肩書きなどは当時のもの)。

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読書で得られるものとは?

経営者・作家

一条 真也

(いちじょう・しんや)早稲田大学政治経済学部を卒業後、冠婚葬祭大手(株)サンレーに入社。2001年に代表取締役社長に就任して以来、孔子の『論語』やドラッカーの著書を中心とした経営戦略で、業績のV字回復に成功する。著書に『ハートフル・ソサエティ』、『孔子とドラッカー』(ともに三五館)など多数。最新刊は『唯葬論』(三五館)、『永遠葬』(現代書林)。

「年収が10倍になる」といった本もありますが、読書の一番の価値は、お金や物が手に入るということではなく、心が豊かになることだと思います。江戸時代には「お心肥やし」という言葉がありました。寺子屋などで勉強して心を太らせるという意味で、思いやりのある人間になるように、子供たちにも教えていたのです。

特にリーダーには、様々な人の心を知ることが必要です。人はどんな時に悲しい思いをして、どんな一言をかけたら喜ぶのか。会社は資本金や建物などではなく、人の集団ですから、読書を通して物事の法則や人間の心を学ばなければ仕事もできません。特に、『論語』は、リーダーに必須だと思います。

経営に読書は必要?

2001年に社長に就任した時、私は『論語』とドラッカーの本を読み込みました。『論語』からは正しい行いを貫くこと、ドラッカーの本からは経営理論を学び、多額の借金を8年で完済し、業績のV字回復を果たしました。

読書は実業でも絶大な効果を発揮します。もちろん、生まれ持った才能の差はあると思いますが、正しい本は必要な能力を引き出してくれるように感じます。

私は毎月の社内報やブログで本の紹介をしていて、社員にも読書を勧めています。そのおかげか、わが社には「世のため人のため」という気持ちで仕事をする社員が多いように感じます。

どう読めば身につく?

お勧めしたいのは、目の前に著者がいて、家庭教師として自分に語りかけてくれているイメージで読むことです。

特に古典を読むことは、偉大な人物の魂と交流をする一種の"交霊術"だと思うんです。ピシッと背筋が伸びますよ。もちろん、小説などエンターテインメント本はリラックスして読みましょう。

また、私は新しい分野を勉強する時、この本をクリアしたら、次のレベルはこの本というように、ゲーム感覚で進めています。義務感ではなく、面白いと思いながら読むのが一番です。

もし、自殺しそうなほど落ち込んだら、その時こそ、ぜひ本を読んでほしいと思います。悩みに答えてくれる本が必ずあるはずです。

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