《本記事のポイント》

  • 7年で"カリフォルニア州やドイツ"をもう一個付け加えた驚くべき経済成長
  • 減税で歳入は2倍となった
  • インフレに為すすべがなかったケインジアン

レーガン米大統領の功績は、節目ごとに、ますます語られるようになっている。

8月13日は、レーガン大統領の1期目の減税法署名から40年目に当たる。これを記念しアメリカでは、複数の保守系メディアやシンクタンクでレーガンの政策の功績を振り返る記事が掲載され、集いも数多く開催されている(レーガンの経済顧問だったアーサー・ラッファー博士は同日、レーガン大統領が1981年の経済再建税法に署名した場所であるカリフォルニアのランチョデルシエロで行われた40周年記念行事のメインスピーカーを務めた)。

今回はそのうちの1つとして、米ウォールストリート・ジャーナル紙に掲載された記事を紹介する。同紙が13日に掲載したラッファー博士とステファン・ムーア氏のコラムは、レーガン政権とは正反対の方向に進むバイデン現政権の経済政策の問題を指摘した。

日本であまり正しく紹介されることがなかったレーガンの経済政策は、どういうものだったのか。今何を学ぶべきか。本記事では、両著者のコラムを一部紹介しつつ、バイデン政権の経済政策の問題や、経済学にまつわる問題について指摘していきたい。

7年で"カリフォルニア州やドイツ"をもう一個付け加えた驚くべき経済成長

以下はコラムの要旨である。

  • レーガンの最初の減税は、半世紀における最も重要で物議を醸した経済政策のパラダイムシフトだった。

  • レーガンのサプライサイド革命は、他の先進国もそれに追随し、所得税の最高限界税率が65%から43%に、つまり3分の1に下がるという世界的な革命となった。

  • アメリカは、レーガンの減税の教訓を再度学ぶ必要がありそうだ。

  • バイデン大統領は、キャピタルゲイン税から相続税まで広範囲にわたる増税を予定している。しかもその税率は(レーガンの前の)ジミー・カーター大統領時代よりも高くなる予定だ。

  • レーガンが大統領に就任した当時の米経済は、70%もの所得税と1980年時点の14%ものインフレ率のお蔭でボロボロになっていた。経済学の語彙に"スタグフレーション"という陰鬱な単語が登場するようになったのも、この頃だ。

  • ケインジアンの民主党は行き詰まっていた。リベラルな経済学者の権化ポール・サミュエルソンは「インフレから脱するには、10年に及ぶ高い失業率を耐え忍ぶしかない」と緊縮財政の実施を薦めた。

  • レーガンは、この緊縮モデルを退け、サプライサイドの楽観主義を採用。(ノーベル経済学賞受賞の経済学者の)ロバート・マンデルとラッファー、ジャック・ケンプのアドバイスを受けて、10年にわたる惨状への処方箋は、規制緩和と減税で国民の働くやる気を喚起し生産を増やすことだと国民を説得したのだ。

  • 低い税率と失業率を減らし物価を安定させると予想した。

  • 1981年の「経済再建税法(The Economic Recovery Act)」は、70%もの所得税の最高税率を50%まで引き下げた。86年の「税制改革法」では、28%まで引き下げた。

  • 賭けは成功した。レーガン政権時代、世帯所得の中央値は、1981年の60,597ドルから68,229ドルと、8000ドルも上昇。

  • 1980年代に貧困層に属していた86%の世帯が、90年までに上位の所得階層に移ることができた。

  • インフレ率は1980年の14%から1980年代の終わりに4%に下がった。

  • 1981年から89年までの間、GDPは年率で7.3%も上昇した。カリフォルニア州がもう一つ加わるほどの成長だったのだ。

  • 1980年から1990年の税収は名目で約2倍も増え、富裕層のトップ1%からの税収の歳入に占める割合は19%から26%となり、最終的に40%となった。

  • アメリカの富は実質で1980年から2020年までの40年間で100兆ドルも増えた計算だ。

  • レーガンの政策は負債を増やしたという民主党からの影響力のある批判があるが、富は急速に増大する中、1983年当時の政府債務は対GDPで38%。かたやバイデン氏の政府債務は対GDP130%で約3倍だ。

  • バイデン氏はこの40年間の進歩を取り消し、福祉と富裕層への増税で70年代に戻ろうとしている。

レーガン就任時の米経済は、ボロボロだった。それにもかかわらず、経済再建税法の減税政策が実行に移された83年から1990年の間の経済成長分だけで、ドイツ一国の経済規模を上回ったとも言われている。7年間で、もう一個分ドイツを創ったと言えるほどの、驚異的な成果だった。

そしてアメリカの減税を、世界の50カ国が真似たのだ。

インフレに為すすべがなかったケインジアン

しかし、バイデン政権は正反対の政策を打つ。それにより、レーガン政権以前の悲惨な状況が再度やってくることが危惧される。

その兆候として現れ始めているのが、インフレである。

ラッファー氏とムーア氏のコラムが指摘している通り、サミュエルソンを筆頭とするデマンド(需要)サイドのケインジアンの経済学者は70年代から80年代前半にかけての物価高で失業率も高くなるスタグフレーションを説明できなかった。

失業率が高くなるという副作用があるが、10年におよぶ緊縮財政を実施するしかないと、途方に暮れていたのだ。

レーガンはそんなアドバイスをはねのけ、急増するマネーサプライに歯止めをかけると同時に、供給量を増やすべきだという、マンデル氏やラッファー氏のサプライサイドの提言を聞き入れた。(後編に続く)

(長華子)

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