<ニュース>
トランプ米大統領が通商政策の公約として、唯一実行していなかった「中国に対する為替操作国の認定」を決断した。
<詳細>
スティーブ・ムニューシン米財務長官は5日、中国を為替操作国に認定したことを発表した。アメリカは今後、IMF(国際通貨基金)とともに、中国の不公正な行動を改めさせるとしている。
<背景>トランプ政権は中国から資本を流出させ、中国に圧力をかけたい
トランプ政権は中国に制裁関税をかけるなど、同国から譲歩を引き出そうとしている。
理論的には、関税を10%かけても、人民元が10%下がれば、制裁効果は相殺される。アメリカが関税を課すたびに、中国側は人民元が安くなることを容認すればいい。制裁関税が始まった2018年以降、人民元は対ドルで約10%下落し、制裁効果は軽減されている。
しかし、そうした中国のやり方にも限界がある。
人民元が安くなるということは、中国から他国に資本が流出することを意味する。中国は長年、他国から資本を流入させることで、インフラ投資などに多額のお金を投下し、高い経済成長率を実現してきた。
中国から資本が流出すれば、こうした成功モデルは通用しなくなる。
今年に入ってからは、貿易戦争によって、中国国内で倒産やリストラが相次いでいる。そうした件数が増えれば、中国経済への信用不安が起き、経済自体が崩壊しかねない。そのため中国政府は、無秩序に人民元が安くなることを許容できない事情がある。
トランプ政権は、そうしたことを理解した上で、中国から資本を流出させようと「金融戦争」を仕掛けている。それによって、構造改革と軍縮を行うよう圧力をかけている。
<補足>アメリカは利下げし、貿易戦争のダメージを吸収したい
貿易戦争の長期化は、アメリカ国内の物価上昇を招き、同国の経済に悪影響を及ぼす側面もある。
これに対し、ピーター・ナバロ大統領補佐官(通商製造政策局長)は6日、「アメリカの連邦準備理事会(FRB)は、年末までに少なくとも0.75%か1%利下げしなければいけない」と述べ、さらなる金融緩和を求めた。
FRBが利下げすれば、ドルが安くなり、中国の輸入品が値上がりすると同時に、アメリカの輸出品が安くなる。そうすれば、アメリカの製造業が復活し、国内の景気がよくなる。
そのためトランプ政権は、FRBに再三にわたって利下げを要求している。
<日本がすべきこと>「デフレから脱却」し、景気回復を急ぐこと
米中が対立するフィールドが広がる中、日本は「デフレ不況」から脱却できず、景気が停滞している。
10月に消費増税を行えば、ただでさえ勢いがない消費活動に冷や水を浴びせ、「消費不況」に突入する可能性がある。その時、日本経済はボロボロになるだろう。
貿易戦争のダメージを緩和するためにも、大胆な減税とインフラ投資などで、デフレ不況から脱却させることが先決だ。
景気を回復させ、中国に進出する企業を国内に回帰させることが必要だろう。
(山本慧)
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