《本記事のポイント》

  • 親と暮らせない子供の里親制度推進のために、政府は補助金増額など支援拡充方針
  • 他先進国の里親委託率が50~90%に対し日本は約18%。人工妊娠中絶も問題に
  • 宗教的に見れば、親子の縁も、里親と里子の縁も深いものがある

厚生労働省がこのほど、里親委託率の向上を目指して、補助金の増額などの支援を拡充する方針を決めた。2日付産経新聞が報じている。

里親制度は、虐待や親の病気、経済的な理由などから親元で暮らせない18歳(必要な場合は20歳)までの子供を預かり育てる制度。戸籍上も自分の子供として育てる特別養子縁組とは異なり、子供が自立したり、生まれ育った家庭に戻ったりするまでの期間、家庭に受け入れ育てるもので、数カ月から十数年まで期間はさまざまだ。

里親に年齢制限はなく、必要な研修などを受けて登録する。里親になれば、生活費や医療費、教育費など、子供の養育に必要な経費が支給される。

他先進国と比べて遅れている里親制度の普及

日本で里親が必要な子供は2017年3月時点で約4万5千人おり、うち81.2%が施設で共同生活を送っている。里親とともに暮らしているのはわずか18.3%だ。

他の先進国では、保護を必要とする子供に対し、オーストラリアで90%、香港で80%、米国・英国で70%、フランス・ドイツ・イタリアで50%が里親に委託されている。日本は後れを取っているのが現状だ。

こうした現状を受け、政府は2016年に改正された児童福祉法で、「原則として、施設より家庭に近い環境の養育である里親制度を推進する」旨の新目標を導入。里親委託率を未就学児はおおむね7年以内に75%、就学児は10年以内に50%へ引き上げ、養子縁組は5年で1000件以上の成立を目標にしている。

今回の支援拡充は、里親制度の理解促進や、母親と子供をつなぐ仲介役の増加などに充てる方針。里親制度の認知の企画立案などを行う「里親リクルーター」や、里親への研修を行う「里親トレーナー」(共に常勤)を配置した自治体に年間約500万円を補助するなど、里親制度推進に向けて具体的な行動を起こしている自治体への支援がメインとなる。

前述の、里親制度が進んでいる国々では、各自治体が民間の団体と連携するなどして、里親制度が身近なものになっている。日本でもNPO法人など民間で、里親制度の認知や仲介支援を行う団体やボランティアが活動しており、今回の支援方針でも、自治体が民間に委託することも可能としている。

政府の支援方針は一定の評価に値するが、日本で里親制度が広がらない理由を解決しなければ、根本的な支援にはならない。一般的には里親制度の周知不足や、血縁を重視する風潮などが挙げられるが、宗教心の欠如も大きいのではないか。

里親希望者を増やし、人工妊娠中絶を減らすカギは宗教的価値観

キリスト教など宗教的な価値観が浸透しているアメリカでは、中絶禁止法が制定されている州もあるなど、中絶が簡単には選択されないことが多い。望まぬ妊娠の場合、事前に申し込みを行うなどしておき、いざ子供が生まれたら、スムーズに里親や養子縁組を望む夫婦やカップル、施設などが引き取り育てるシステムが確立されている。

一方、日本では、公式なデータでは減少してはいるが、人工妊娠中絶が今も社会的な問題となり続けている。未成年や性犯罪などによる妊娠は別問題だが、出産や子育てが可能な立場での中絶が、欧米と比べ比較的容易に選択できてしまう。近年では出生前診断などで胎児に異常が見つかった場合の中絶の是非も議論されている。

さらに、宗教的な側面から見ても、中絶は推奨できない。霊的真実を言えば、人間は「魂」という"永遠の生命"を持ち、新しい人生経験を積んで魂を磨くために、何度もあの世とこの世を生まれ変わっている存在だ。

そして、親子の縁も偶然ではなく、前世や前々世などでも親和性のある魂同士で、親子の約束をして生まれてくることが多い。中絶すると、その約束や縁が切れてしまい、生まれる予定だった魂は混乱に陥ってしまう。例え自分で育てるという選択をしなくても、縁あって生まれる命を大切にしたい。

そして、里親と里子の縁も、今回の人生で偶然にできたとは言えない。親子の縁と同様、親戚や友人、恩師や仕事仲間など、深い仲にある人々とも、過去世からの縁でつながっていることが多い。大川隆法・幸福の科学総裁は、書籍『生命の法』で次のように記している。

魂的に縁のある人々は、"同期生"として、転生輪廻(てんしょうりんね)のたびに、だいたい同時代に生まれます。時代が変わっても、たいていは、親しい仲間が、ある程度のグループになって、同じようなときに生まれ、家族や親戚になったり、仲のよい友達になったり、職場でいつも顔を合わせる同僚になったりするので す」

たとえば、自分の親や兄弟姉妹、祖父母、子供、孫、親戚などといった身内の人々が、それに当たります。また、深い縁のある友達や、なぜか気の合う仲間もそうです。あるいは、職業で縁のある人、たとえば、いつも一緒に働いている仕事上の協力者や、とても協力的な取引先の人なども、縁の深い魂かもしれません

たとえ実子でなくとも、縁あって出会った里親と子供も、深いつながりがあるはずだ。このような価値観が一般的になれば、里親希望者が増え、人工妊娠中絶の件数も減少するだろう。政府にも、補助金の拡大だけでなく、今一歩踏み込んだ形での里親支援や、宗教心を育める教育など、根本的な対策を望みたい。

(駒井春香)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『ただいま0歳、心の対話』 大川隆法監修/大川咲也加編著/大川隆一協力

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=2102

幸福の科学出版 『生命の法』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=127

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2008年6月号 養子縁組・里親制度を考える

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