2018年1月号記事

第63回

釈量子の志士奮迅

幸福実現党党首

釈量子

(しゃく・りょうこ)1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、(宗)幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から幸福実現党党首。

釈量子のブログはこちらでご覧になれます。

http://shaku-ryoko.net/

許していいのか、「後出し増税」ラッシュ

今の世の

お上はきつい喘息で

昼も税々 夜も税々―。

江戸時代の狂歌さながらの、増税ラッシュが迫ります。

政府は、衆院選が終わった翌日から「税制調査会」を開き、選挙で表立って触れなかった"事実上の所得税増税"について議論し始めました。名目は「給与所得控除の見直し」ですが、一定の所得を超える会社員の場合、10万円以上も負担が増えるという増税です。

低所得者の税負担を、高所得者に回す制度設計ですが、要は「累進課税」の強化です。

それに加え、「出国税」「宿泊税」「森林環境税」といった新税も次々出てきています。その多くが、選挙では触れられていませんでした。税制が中心的な争点でしたから、あまりにも不正直です。

しかも、こうした増税案が、国民にチェックされる機会はもうありません。2018年頭には法案提出となり、年度内までには、あっという間に法制化されるのが既定路線です。一連の増税を、週刊誌も「だまし討ち増税」と批判しています。

すでに日本は、事実上の税金である社会保障を含めれば、所得に占める国民負担率が4割以上という「重税国家」です。それにもかかわらず、すんなりと増税が通ってしまうのにも理由があります。

まず、日本の会社員は、企業が税務署の肩代わりをする源泉徴収システムにより、いくら税金を取られているのかをあまり知りません。控除額が来年度から減ったとしても、実感しにくいのです。

また大手新聞は、消費税率を10%に上げた時の軽減税率の対象に入れてもらっているため、財務省に歯向かいません。

自民党は、消費税以外の「増税ラッシュ」について、選挙で表立って言わなかった。写真:アフロ

まずは政府が無駄を削って

国民自身が、「安易な増税は認めない」という意識を高める必要があります。

そもそも、政府は国民に増税を押しつける一方、予算の削減努力をまだしていません。

11月8日、会計検査院は16年度の政府による税金の無駄遣いが874億円だったと報告しました。これは、出国税で見込まれる税収(400億円)と森林環境税で見込まれる税収(300億円)を足しても、お釣りが来る金額です。

さらに、民間企業よりも高いと批判されている公務員の給料が、また上がる見込みです。それに要する予算は全国で1900億円とも言われます。これは、「たばこ税」増税で見込まれる2000億円とほぼ同額です。

他にも、天下り先の特殊法人などへの出資金などの金融資産を抱えています。

「単年度予算制」によって、年末になると予算消化のために道路を掘り返す慣例など、国民に負担を求める前に改めるべきお金の使い方が、ごまんとあるのです。

そもそも、すでにこの国の年金制度は、事実上破たんしています。これは明らかに制度設計の間違いです。政府はその失政の実態を隠したまま、ツケを国民に振り替えようとしているのです。

政府はそれを誤魔化すため、「格差是正」という理論構築をします。国民の嫉妬心に訴えかけることは、常套手段です。こんなことがまかり通る日本は、私有財産をいくらでも巻き上げられる「社会主義」にひた走っています。

税は「自由」の侵害

ここで日本は、「税とは自由の侵害である」という原点に立ち返る必要があります。

注目すべきは、アメリカのトランプ大統領です。トランプ氏は、連邦法人税率を35%から20%へと下げて、相続税も段階的に廃止するという法案の年内成立を目指しています。

こうした大減税には、もちろん「雇用や起業が増える」という経済学的な理由があります。

しかしそれ以上にトランプ氏が強調しているのが、「税は、自由を奪う」という考え方です。税金の元になっているのは、国民が人生の貴重な時間を使って働いたお金です。そして、そのお金は本来、老後への備えや、家族のために使われるはずのものです。そのため、トランプ氏は減税を訴えるに当たって、「自由は政府ではなく、神からの贈り物だ」と演説しているのです。

幸福実現党は、神仏の子の尊厳として、神から与えられた自由を守ることを使命と感じています。だからこそ、「安い税金」「小さな政府」を掲げ、松下幸之助氏が生前、荒唐無稽と揶揄されながらも掲げ続けた「無税国家論」は、新たな文明の試みとして取り組むべきと考えています。

税制を変えるには、政治家の勇断が必要です。私たちは自由を奪う大増税の流れを逆行させるべく、奮闘してまいります。