(左)安倍首相(Frederic Legrand - COMEO / Shutterstock.com)/(右)吉田元首相(Wikipediaより)

《本記事のポイント》

  • 自民党の安保障政策はアメリカに全面依存
  • 自民党の米国依存の原点に「吉田ドクトリン」
  • 「再軍備しなかったことが経済成長につながった」のか?

自民党が掲げる安全保障政策は、防衛費は微増、非核三原則は堅持など、「アメリカが敵国に報復してくれること」に全面的に依存したものとなっている。

たしかに、集団的自衛権があるので、日本が北朝鮮の攻撃を受けた場合、アメリカが参戦する可能性もある。しかし、アメリカの参戦は、権利であって義務ではない。

アメリカ本土が攻撃されれば、報復するのは100%確実だろうが、通常兵器で日本が襲われた場合に、アメリカが報復する可能性は80%ほどだと言われている。

そのため幸福実現党は、「自分の国は自分で守る」ことをスローガンとして、憲法9条の改正、防衛費の倍増、非核三原則の撤廃、核装備の保有など国防強化策を訴えている。

自民党の米国依存の原点に「吉田ドクトリン」

自民党の対米追従・親米保守の路線の根元には、憲法9条がある。9条2項において、戦力不保持と交戦権の否定が定められ、自衛隊の憲法上の根拠は曖昧なままであり、自分で自分の国を守れない状態だ。

その源流にあるのが、終戦直後の混乱期に首相を務めた吉田茂(1878~1967年)である。

朝鮮戦争さなかの1951年1月、アメリカのダレス国務長官は吉田首相に憲法改正を要請した。このとき憲法を改正し、小規模であっても正規の軍をつくっていれば、日本は自分の国を自分で守れる主権国家になっていただろう。

しかし吉田首相は断った。その理由について、令嬢の麻生和子氏はこう述べている。「うちの父はつむじ曲がりで、ダレスとか、マッカーサーとか、ああいう連中に高圧的に言われると、カッとなって、逆のことを意固地になっていう人間なのです」(田久保忠衛vs. 加瀬英明『日本国憲法と吉田茂』)。

吉田茂という人は、"へそ曲がり"で、何でも反対したがる人であったようだ。強い相手に反論するというのはカッコいいようにも見えるが、政治家とは、本来「国家百年の計」を立てるべき存在だ。政治哲学を持って、賛成すべきは賛成し、反論すべきは反論しなければいけない。

近代政治学の祖であるマキャベリは、「武力のない国は、武力を持った国に屈服せざるを得ない」という現実を直視し、自主防衛を強調した。ローマに滅ぼされたカルタゴが、傭兵に頼っていたように、傭兵に頼ると国が滅びることは歴史上証明されていたからだ。

もし本当に、吉田首相が「カッとなって」逆のことを言ったのなら、軍が国を支える最も重要な柱であることを理解していなかったといえるだろう。

「再軍備しなかったことが経済成長につながった」のか?

吉田首相の政策は、その後、自民党で首相になった、池田勇人、佐藤栄作、大平正芳、宮澤喜一らが引き継いだ。

先の大戦で多大な犠牲を払ったので、憲法を護持し、防衛はアメリカに任せ、軽武装のままで経済大国を実現する――。これが正しいとする「吉田ドクトリン」は、政界、財界のみならず、日本全体に広がった。

青山学院大学の国際政治学者・永井陽之助氏は、「日本の経済発展は、再軍備をしなかったからだ」と吉田ドクトリンを讃えた。

しかし、朝鮮戦争時の日本を除けば、軽武装であることと経済成長との間に因果関係はない。台湾やアメリカも、国防費を増額しつつ経済成長を遂げている。

軽武装のおかげで日本は繁栄したという論理は、吉田茂を"御本尊"に祭り上げるためのイデオロギーと化しているのだ。

一方で、吉田ドクトリンによって失われたものは計り知れない。(後編に続く)

(長華子)

【保守政党・公約比較】希望は候補が「民進党」、自民は政策が「民進党」

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【関連書籍】

幸福の科学出版 『吉田茂元首相の霊言』 大川隆法著

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