《本記事のポイント》
- 「選挙報道を糺す会」が衆院選の偏向報道を正すよう求める陳情を総務省に提出した
- 衆院選のテレビ報道では、特定の政党ばかりを報じる不公平な偏向報道がなされている
- 偏向報道は、放送法に違反しており、国民主権のもとになる「知る権利」を侵害している
10月22日の投開票に向けて、連日、テレビでは衆院選関連のニュースが報じられている。
多くの有権者は、こうしたテレビの放送内容を見て、各党が訴えている政策や候補者についての情報を得ているだろう。しかし、このテレビ放送が、特定の政党だけを選んで報じ、中には全く放送されない政党や候補者もいるならば、真に公平な選挙を行うことはできるのだろうか。
「選挙報道を糺す会」(以下、「糺す会」)はこのほど、野田聖子総務相に対し、衆院選の偏向報道を公正・中立かつ平等にすべく指導を求める陳情を提出した。陳情書の趣旨は以下の通り。
- 1、現在、衆議院選挙に関するニュースなどの報道番組において、「3つの勢力が争う構図」、「三つ巴の戦い」、「3極対決」、「3極舌戦」などのテロップを付して、立候補者数の多寡とは無関係に、特定の8つの政党のみを取り上げて報道する「偏向報道」がなされている。
これは、「国民の選択」を誘導するものであって、国民の主権を侵すものである。このような「偏向報道」を即刻是正すること。
- 2、ニュースなど報道番組における小選挙区に関する報道においては、一部の立候補者のみをことさらに取り上げる「偏向報道」が見受けられる。このような「偏向報道」を即刻改め、立候補者全員の政策、選挙活動状況等をバランスよく、平等に報道すること。
- 3、公職選挙法や政党助成法等の政党要件を満たしていないから報道しないと反論することもありうるが、それは理由にならないと指導すること。
公正・中立性を欠いた選挙報道の数々
以下、選挙関連ニュースの「偏向」の実態について、「糺す会」の資料に基づいて見ていきたい。
(1) 特定の政党のみを取り上げる「偏向報道」
テレビの各局は10月10日の公示日に、党代表の第一声や政策等について報道した。各党代表の第一声は、各局とも、自民、公明、日本のこころ、共産、立憲民主、社民、希望、維新の8政党の代表者の演説しか放映しなかった。
立候補者がわずか2人に過ぎない「日本のこころ」は、党代表の第一声が各放送局によって報道されている一方で、立候補者が76人の幸福実現党については、党首の第一声は全く報道されず、政策なども取り上げられなかった。これは極めて不公平な「偏向報道」だ。
(2)小選挙区における「偏向報道」
「糺す会」の資料によると、こうした「偏向報道」は、小選挙区候補者に関する報道でも顕著だった。
≪東京第10区≫ 立候補者6人中4人しか報じられない
東京都第10区では、届出順に、若狭勝氏(希望の党)、鈴木庸介氏(立憲民主党)、鈴木隼人氏(自由民主党)、岸良信氏(日本共産党)、吉井利光氏(幸福実現党)、小山徹氏(無所属)の6人が立候補している。
しかし、テレビ局各社の報道番組では、若狭氏、鈴木両氏、岸氏の4候補者をことさらに取り上げ、他の候補者については立候補の事実を簡単に告知するにとどまるなど、公正・中立性を欠く不平等な報道がなされている。
≪東京第1区≫ 一部の政党の特定の候補者のみを報じている
また、東京都第1区では、届出順に、松沢香氏(希望の党)、原口実季氏(幸福実現党)、山田美樹氏(自由民主党)、又吉光雄氏(世界経済共同体党)、海江田万里氏(立憲民主党)、犬丸光加氏(犬丸勝子と共和党)の6名が立候補している。
しかし、同区に関する報道も、一部政党の特定の候補者の活動のみが報じられ、その他の候補者については立候補の事実を簡単に告知する、または全く報道しないなどの不公平な報道がなされている。
偏向報道は「国民主権」を侵害する
そもそも、選挙報道で一部の政党や候補者のみを取り上げることは、「放送番組の編集に当たっては政治的に公平であること」と規定する放送法4条に違反している。
また、選挙においてどの候補者を選ぶかは、国民一人ひとりが自由な判断によって決めるものだ。しかし、選挙報道における恣意的な「偏向報道」は、選挙の「国民の選択」を誘導してしまう。それゆえに、民主主義の政治に必要不可欠である、国民の「知る権利」を侵害するものだ。
マスコミが不公平な報道を繰り返すことで、国民の意志を正しく反映した選挙が行えなければ、憲法で定められた「国民主権」をマスコミ報道が侵害しているといえる。
衆院選の投票日は22日に迫っている。放送事業者・報道担当者には、こうした偏向報道を是正し、公正かつ平等な報道をすることを強く求めたい。
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