《本記事のポイント》

  • 韓国政府は昨年10月にアメリカに核配備を要請していた
  • 北朝鮮と対峙する韓国にとって核配備は悲願
  • すでに北朝鮮のミサイルが届く日本も核配備を検討すべき

韓国政府が、アメリカの戦術核兵器を韓国に再配備することを、昨年10月にアメリカ側に要請していたことが今月10日、元当局者の話として明かされた。韓国・中央日報(11日付電子版)が報じた。

しかし当時のオバマ政権は「核なき世界」を掲げていたこともあり、要請は断られたという。

国防相会談でも核装備に言及

韓国では、こうした核装備に向けた議論が活発になってきている。

先月末に行われた韓国の宋永武(ソン・ヨンム)国防部長官と、アメリカのマティス国防長官の会談でも、韓国への戦術核の配備論や原子力潜水艦配備の問題についての言及があった。

ただ、韓国の文在寅政権は朝鮮半島の非核化を推進する立場から戦術核の配備に反対しており、会談後、韓国政府高官は、「(戦術核導入について)具体的な話はなかった。韓国国内でそういう話が出ていると言及しただけ」などと述べた。

まだ具体的な核配備の話というわけではないが、北朝鮮がICBMを完成させれば、アメリカの「核の傘」による抑止力が効かなくなることを、韓国側が危惧していることがうかがえる。

韓国にとって核配備は悲願

配備が議論されている「戦術核」とは、主に射程距離が500キロ以下の核ミサイルをさす。「戦略核」が、敵国の都市や工業地帯・重要軍事施設など、破壊されたら戦争遂行に多大な影響が出る戦略目標の破壊を目的としているのに対し、敵軍の陣地や部隊などの戦術的軍事目標の破壊を目的としている。

つまり、韓国の核保有の主目的は、対北朝鮮ということだ。

韓国は、1964年に中国が核実験に成功したとき、「中国は北朝鮮に核兵器を容易に移転しかねない」との懸念から、自主防衛のための核開発を重視するようになった。1970年代初めには、朴正煕大統領の下で核開発を進めており、フランスからプルトニウムの生産が可能な再処理施設を購入することを決定した。

しかし、アメリカとカナダから圧力を受けたため、1976年に断念せざるを得なかった。その後、韓国には在韓米軍の戦術核が置かれるようになったが、1991年に核兵器の削減宣言に伴って、米軍部隊と共に撤退した。

もともと、韓国にとって核配備は悲願だったのだ。

韓国世論は核武装に賛成が多数

北朝鮮の度重なるミサイル発射を受けて、自国防衛のために核保有を、という韓国の機運は再び高まりつつある。昨年9月には、保守系のセヌリ党を中心とする議員グループが「可能な限り全ての核武装の実用化策を議論しなければならない」との声明を発表しており、10月に行われた世論調査では、「核武装に賛成」が58%と、「反対」の34%を大きく上回った。

38度線で隣り合う国が、いつ攻撃を仕掛けてくるか分からない情勢下で、抑止力として核保有の声が上がるのはある意味当然である。

日本にも核抑止力が必要

日本にとっても他人ごとではない。今年に入ってから、北朝鮮のミサイル発射実験は頻度を増しており、そのミサイルがすでに日本列島に届く性能を持っていることは明らかだ。

日本も、北朝鮮の脅威から国を守るための体制づくりを急がねばならない。

本欄で何度も述べているように、非核三原則を撤廃し、アメリカとの核シェアリングなど、北朝鮮に対する強い抑止力を持つべきではないか。同時に、核が搭載されたミサイルが発射された場合に備えて、全国で避難訓練をしたり、長期的には核シェルターをつくったりと、対策を取る必要もあるだろう。政府や自治体は、国民を守るために最善を尽くすべきだ。

(HS政経塾 須藤有紀)

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