度重なるミサイル発射で、北朝鮮への警戒は強まるばかりだ。

7月28日に北朝鮮が発射した大陸間弾道弾(ICBM)について、ロイター通信は米政府当局者の話として「米本土の大部分に到達する可能性がある」と伝えている。

当局者は北朝鮮がICBMを開発する動機は「自国への攻撃を避けるため」と分析するが、これに核弾頭を搭載できるようになれば、現実には他国を恫喝することが可能になる。

8月2日には、9月1日以降、アメリカ人の北朝鮮への渡航が原則禁止となり、北朝鮮にいるアメリカ人も、9月1日までに国外退去することが呼びかけられた。6月には、1年半北朝鮮に拘束されていたオットー・ワームビアさんが、帰国後に死亡する事件が起きた。アメリカ人が逮捕・拘束されるリスクが高まっていることを受けての措置という。

1日にアメリカのNBCテレビに出演した共和党のリンゼイ・グラム米上院議員は、トランプ氏と面会した際に「北朝鮮を阻止するために戦争が起きるとすれば、現地(朝鮮半島)で起きる」と聞いたと明かしている。トランプ氏直接のものではないが、北朝鮮に対し、アメリカが軍事行動に出る可能性を示したことで注目を集めている。

一方、グラム氏の発言により、アメリカが「軍事行動の方針を固めた」との印象を与えることを避けるためか、国務長官のレックス・ティラーソン氏が1日に異例の会見を行った。「北朝鮮の体制転換や体制崩壊などを希求しない」と発言しつつ、非核化を条件に北朝鮮と直接交渉を行う用意があるとした。

4月の米中首脳会談でアメリカに対し、北朝鮮への圧力をかけることを約束した中国だが、結局は何もしないままだ。それでもティラーソン氏は「責められるべきは北朝鮮だけ」として、引き続き中国の協力を求める姿勢を示している。

ただ、トランプ大統領は7月末、「北朝鮮について、何もしなかった」とツイッターで中国への失望を明らかにしている。今後中国に対し、不正な貿易慣行などを理由として高関税などの制裁を科すことを見据え、調査を検討しているとロイターが報じている。

自主防衛を進める韓国

そんな中、韓国の文政権は、有事を見据えての国防強化に本腰を入れ始めている。

北朝鮮からICBMが発射された7月28日深夜、韓国政府は米韓ミサイル指針の改定交渉を進めることを発表した。現在の指針では、射程距離800キロの弾道ミサイルに搭載できる弾道重量は500キロに制限されているが、これを倍の1トンに増やす方針だ。

核兵器の使用兆候があった時を想定し、文在寅大統領が、金正恩氏がいる中枢周辺を集中攻撃する韓国型大量反撃報復作戦(KMPR)の早期整備を指示したとの報道もある。国防相の宋永武(ソン・ヨンム)氏も、原子力潜水艦の建造について検討する準備があると発言するなど、自主防衛体制を急速に進める意向を示している。

こうした国防強化策の背景には、北朝鮮がICBMでアメリカ本土を攻撃できるようになった場合に、アメリカが攻撃を受けるリスクを負ってまで、韓国防衛を行えなくなるということへの危機感がある。

トランプ大統領は選挙中、日本と韓国の核武装を認める可能性に言及したことがあったが、確かにアメリカの核の傘が機能しなくなった場合、軍事侵略の意図を持つ核保有国から身を守るには、他に手段がない。北朝鮮に対応するために、残された時間はほとんどないといえる。

日本を取り巻く状況は韓国と全く同じだ。それにも関わらず、憲法9条の改正も道のりは遠い。しかも、韓国については、文政権が反日政策で北朝鮮と共闘し、融和的に統一するというリスクが消えていない。北朝鮮への対策を、韓国任せにするわけにもいかない。

残された時間はほとんどない。アメリカと協力しつつ、日本はアジアの平和を守るためにも自主防衛の実現を急がねばならない。

(河本晴恵)

【参考書籍】

幸福の科学出版 『戦後保守言論界のリーダー 清水幾太郎の新霊言』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1894

幸福の科学出版 『政治の意味 日本と世界の論点、その「本質」と「未来」』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1883

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