2017年6月号記事

マレーシア航空370便 謎の行方不明から3年

誰が何を隠しているのか

航空史上最大のスキャンダルを追う

南シナ海の上空で、乗員乗客239人を乗せた「マレーシア航空370便」が姿を消してから3年が過ぎた。さまざまな物証や専門家の分析から、南インド洋に墜落したとする通説を覆す真相が浮き彫りになった。

(編集部 山下格史、小林真由美、片岡眞有子)


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検証 MH370便の墜落場所は本当に南インド洋なのか / マレーシア航空370便 謎の行方不明から3年 誰が何を隠しているのか 航空史上最大のスキャンダルを追う Part 2

検証 MH370便の墜落場所は本当に南インド洋なのか / マレーシア航空370便 謎の行方不明から3年 誰が何を隠しているのか 航空史上最大のスキャンダルを追う Part 2


参考記事


検証

MH370便の墜落場所は本当に南インド洋なのか

370便が南インド洋に飛んで行ったという説を支えるマレーシア空軍のレーダー情報は、本当に正しいものか。

検証 01

マレーシア空軍のレーダー情報は矛盾ばかり

370便は午前1時21分、南シナ海上空でマレーシアの航空管制レーダーから姿を消した(図(2))。これは、機体にあるトランスポンダという通信機器の信号が管制塔に届かなくなったことを意味する。

ほぼ同時に、タイの軍事レーダーからも姿を消したが、軍事レーダーは機体の通信状態に関係なく、物理的に機体が存在するか否かを探知するものだ。

2つのレーダーの状況を踏まえれば、最優先に「その場に墜落した」可能性を考えるべきだろう。

ところが、マレーシア空軍は失踪から2日後、「当日の午前2時15分に、マレー半島を東から西に横断する正体不明の飛行物体を探知した」と発表(同(2)から(3))。1週間後、マレーシア当局はこの飛行物体が370便だったと断定。しかし、その明確な根拠は示さなかった。

そもそも、正体不明の飛行物体が軍のレーダーで捉えられれば、戦闘機が緊急出動(スクランブル)してもおかしくない事態だ。しかし、マレーシア空軍はその飛行物体を追跡しなかったという。

何も映っていなかった

マレーシア空軍の主張では、正体不明の飛行物体はマラッカ海峡を横断したことになっている(同(3)以降)。 しかし、この空域を監視していたインドネシア空軍は、当時のレーダーには何も映っていなかったと発表。 インドネシア側は一貫してこの主張を繰り返し、そのデータもマレーシア政府に渡しているという。

インドネシア空軍が正しいなら、マレーシア空軍の「370便が方向転換して西の方向に飛行した」という主張は成り立たない。

マレーシア当局は、なぜ飛行物体を370便と断定したのか。なぜインドネシア空軍の発表と矛盾するのか。本誌の取材に対し、マレーシア政府から期日までに回答はなかった。

次ページからのポイント

南インド洋墜落説を支える衛星データ解析は不確か

南インド洋の残骸は370便とは断定できない