1月に東京オートサロン2017で展示された、マツダの新型CX-5。
2017年3月号記事
トランプの「ツイート砲」が直撃
製造業が日本に戻る日
メキシコからアメリカに輸出するマツダの地元 広島は今
海外に工場を移し、利益を上げてきた日本企業。しかし、トランプ新大統領の登場で、潮流が変わりつつある。メキシコの新工場の操業を始めて間もないマツダ本社のある広島で、日本の製造業復活のヒントを探った。
(編集部 山下格史、河本晴恵)
「トランプの大統領就任で大変なことになるんじゃないか、ってみんな心配しています」
広島に本社を置く自動車メーカー「マツダ」に勤務するAさんはそう語る。
トランプ氏は就任直前の1月、アメリカで売る車をメキシコの工場で造ろうとしているトヨタに対し、「アメリカ国内で生産するか、国境税を払え」とツイッターでつぶやき、日本の自動車メーカーを震撼させた。
アメリカにも複数の工場を持つトヨタは、アメリカでの生産や雇用を増やす"代案"で切り抜ける構え。同じくアメリカ、メキシコ両国に工場を持つ日産やホンダも動向を注視する(1月18日時点)。
だがマツダは他社と事情が異なる。2011年にアメリカ生産を取りやめ、14年に操業を始めたメキシコ工場をアメリカやヨーロッパへの輸出の拠点として、生産の拡大を図ろうとしているところだ。
トランプ氏が北米自由貿易協定(NAFTA、注1)を見直せば、メキシコで造ってアメリカで売るマツダ車に、それまでかからなかった高い国境税がかけられる。
トランプ氏はすでに、ドイツのBMW社のメキシコ製自動車に35%の国境税を課すと明言した。日本の自動車メーカーが、賃金の安いメキシコで生産し、アメリカに売って稼ぐというビジネスモデルは崩壊の危機にある。
広島の製造業はどこへ
マツダの本社工場がある広島県は、造船や製鉄、電子機器や化学製品の工場が集まる「工業県」だ。だが、シャープが16年に台湾企業のホンハイに買収されたことで、広島県内の工場の一部の閉鎖が決まり、人材も技術も台湾に移るという状況も生まれている。
製造業が集まる広島を通して、日本の未来を考えた。
(注1)1994年にアメリカ、メキシコ、カナダの間で発効した。現在、域内では一部を除き、ほとんどの関税が撤廃されている。
トランプ氏の経済カード
- TPP離脱
- NAFTA見直し
- 「国境税」の導入
- 製造業の国内回帰
- 大規模減税
- 二国間の関税交渉
マツダ社員の座談会
海外進出とグローバリズム
取り戻したい愛国心