画像提供:国際海洋資源エネルギー利活用推進コンソーシアム
左/沖縄県久米島にある海洋温度差発電の実証試験設備。右/株式会社ゼネシスのエンジニアリング・グループリーダー岡村盡氏。

2016年10月号記事

未来産業のたまご

第7回

沖縄の海から生まれる無限のエネルギー

資源の乏しい日本にとって、無尽蔵に取り出せるエネルギーの開発は究極の理想だ。 沖縄で始まった世界初の海洋温度差発電の実証実験によって、その夢は次第に、実現に近づいている。

久米島の新奥武橋から見える海。 ひろ♪ / PIXTA(ピクスタ)

四方を海に囲まれた沖縄県・久米島。車なら1時間ほどで1周できる、人口1万人弱の小さな島だ。この南国の島の海岸には、巨大な施設がある。海洋温度差発電の試験施設だ。

ここで2013年、世界で初めて海洋温度差発電の実証実験が始まった。これまでに約60カ国から数千人が、施設の見学に押し寄せている。

沖縄県の委託を受け、現地で実験施設の開発と運営を担う、株式会社ゼネシスのエンジニアリンググループリーダー・岡村盡氏に話を聞いた。

「海洋温度差発電は、温かい表層の海水と冷たい深層水の温度差を使います。低温でも沸騰しやすい液体を、温かい海水で熱して気化し、タービンを回す。

そして、冷たい海水でその気体を液体にして、再び、温かい海水で気体にする、というサイクルによって発電を続けます」(下図)

発電には、海水温度や地形という条件が重要になる。久米島沖は水深も深く、表面の海水と深層水の温度差が年間の平均で20度前後もある。

加えて、久米島は水産業のために日本一の量の深層水を汲み上げており、インフラも整っていた。 設備さえつくれば、海を無尽蔵のエネルギー源とする条件が整っている。

「久米島など、離島では主にディーゼル発電が使われていますが、燃料費がかさみます。海洋温度差発電なら燃料供給の必要がなく、廃棄物も出ません」(岡村氏)

こうした離島には風力や太陽光など、再生可能エネルギーによる発電も導入されているが、天候により発電量は不安定になる。その点、 海洋温度差発電なら発電量が一定で、安定して利用できる。

日本の安全保障の面でも、輸入に依存する石油燃料に代わる、新しいエネルギーの開発は急務だ。

海洋温度差発電の原理