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台湾海軍は主力戦闘艦を含む艦艇を自主建造に切り替える方針を発表した。艦艇の自主建造のため、2018~30年の間で4700億台湾元(約1兆5千億円)を投じる。21日付産経新聞が報じた。
中国からの圧力にさらされる台湾
中国海軍は軍の近代化を進めているが、台湾は依然としてアメリカ海軍の中古品を使っている。これは、日本など他の国ではもはや使えないような老朽品となっている。
台湾としては、新しいモデルの艦艇を輸入したいところだが、中国は、台湾も中国の一部とする「一つの中国」原則を掲げ、台湾が自衛力を高めることをけん制している。
中国が台湾の併合を目論む中、欧米諸国や日本などの第三国が台湾の自衛力を高める援助をすると、中国からの猛反発に遭うことは避けられない。
実際に、オバマ米政権は2015年末、台湾に対してミサイルフリゲート艦など、総額18億3千万ドル(約2228億円)相当の武器の売却を発表した。すると中国側は、在中国アメリカ大使館の臨時大使を呼び出し、武器売却に対して猛抗議。関与した米企業への制裁を警告した。
こうした中国の圧力があるため、台湾は、中国に配慮する欧米諸国から武器を調達することは難しい。新しいモデルの艦艇の調達が見込めないため、台湾は自主建造に踏み切ったのだ。
軍事技術情報が洩れるリスク
台湾への武器輸出が進まないもう一つの理由として、中国スパイによる情報漏えいリスクがある。台湾の国防事情に詳しい、民進党系のシンクタンク「新台湾国策智庫」の李明峻社長は、弊誌の取材に対し、こう述べている。
「馬政権下の8年間で、台湾で多くの中国人スパイが逮捕されましたが、ほとんどが軍関係者でした。台湾の退役軍人は中国側にさまざまな接待を受け、重要な機密事項を漏らしてしまうのです。アメリカが台湾に最新の兵器を売りたがらないのは、中国側に軍事機密が漏れる恐れがあるからです」(詳細インタビューは本誌6月号 http://the-liberty.com/article.php?item_id=11225 を参照)
こうした状況の中、台湾と正式な外交関係を持たない日本には何ができるのか。
蔡英文新政権で、国家安全会議副秘書長(国防副大臣に相当)に就任した陳文政氏は、就任直前の5月上旬、弊誌の取材に答え、次のように述べている。
「(日本と台湾の)政府同士が軍事情報の交換などを直接できないならば、民間企業を通して、台湾のレーダーが捉えた北朝鮮のミサイル情報や、ゆくゆくは日本の潜水艦技術の情報などをシェアするようにすれば、中国を挑発せずに関係を深めることができると思います」(詳細は、6月30日発売の本誌8月号を参照)
日本の国防にも台湾防衛は必須
中国が経済的に力を増す中で、利害関係があるために中国に配慮せざるをえないという国は増えている。しかし、中国の脅威を肌で感じている日本だからこそ、欧米諸国よりも台湾の立場を理解できる。日本まで石油が運ばれるシーレーンは台湾のすぐそばを通っており、台湾は沖縄とも近い。日本にとって台湾の防衛は、自国の防衛の延長にある。
日本政府が表立って台湾と軍事協力する可能性は、現在のところまだ低い。まずは民間交流から徐々に関係を深め、ゆくゆくは、日本政府も台湾関係法の整備などを行い、台湾に「何かあったらいつでも力になる」というメッセージを送る体制を整えることが必要だ。日台関係を強化し、中国に悪を犯させない体制をつくることが、アジアの平和につながる。(小林真由美)
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2016年6月号 台湾ルポ -国防女子が行く!- 日本と台湾は運命共同体だった
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2016年7月号 蔡英文・新政権が発足台湾との絆を深めよう - 国防女子が行く!