蔡英文・新総統は、厳しいかじ取りを担う。

台湾では5月20日に、中国との融和路線を取っていた国民党から、台湾の主権を守る独立路線の蔡英文・新総統率いる民進党へと政権が交代する。

この政権の変わり目を狙って、台湾併合を国家目標にする中国政府が、台湾側にさまざまな圧力をかけている。

会見で台湾を脅す中国の報道官

中国政府で台湾問題を担当する、中国国務院台湾事務弁公室の馬暁光報道官はこのほど、記者会見を開いた。

その中で、馬報道官は、中国と台湾の間で1992年に合意したとされる「1つの中国」という考え方を主張。過去8年続いた国民党政権時代を振り返り、「『1つの中国』を基礎にして平和と安定を保ってきた。こうした現状が続くよう望んでいる」と述べた。12日付各紙が報じた。

また、馬報道官は「もし、台湾海峡の両岸関係に、にらみ合いや危機が生じれば、現状を変更した側が責任を負わねばならない」とし、一触即発の事態を連想させるような「台湾海峡の危機」に言及した。新総統の蔡氏が「1つの中国」の考え方を受け入れないならば、それは「中台関係の現状変更」と見なす、と脅かしているわけだ。

旅行業者に圧力をかける中国政府

いま、台湾では、民進党への政権交代を前に、中国大陸からの観光客が激減している。現地では、「1つの中国」の考え方を受け入れない民進党政権に対する、中国政府の圧力と捉えられている。

実際に、蔡英文氏と民進党が大勝した今年1月の選挙の後に、中国の旅行業者2社が、台湾への旅行客数を制限するよう当局から命じられたことを明かした。広東省のある業者は、中国人は依然として台湾旅行に関心があるものの、政府が旅行の許可件数をカットしたと明らかにしている。(12日付ロイター)。

こうした事態を受けて、中国人観光客をあてにして、大陸路線の拡大方針を続けてきた台湾の航空会社は、対応を余儀なくされている。エバー航空など、台湾の主要航空会社4社は、いずれもフライト数を削減するか、大型機から中・小型機への変更を実施せざるを得なくなっている。

日本政府は台湾を「国」として認めるべき

今後、蔡政権に対する、中国政府の経済的な圧力や脅しは、一層強まるかもしれない。しかし、このまま台湾が中国の圧力に屈してしまえば、地政学的に台湾と運命共同体である日本にも、防衛上の危機が訪れるのは時間の問題だ。

日本はこれまで、中国やアメリカに遠慮して、台湾に対する積極的なアプローチを避けてきた。しかし、親日的と言われる蔡政権の発足を機に、日本は台湾と独自の外交を進めるべきだろう。

具体的には、防衛面では日本の国内法として「台湾関係法」をつくり、台湾海峡で中国との衝突があった時には、台湾側に加勢できる体制を整える。外交面では、台湾を「国」として認めるなどして、台湾の国際社会への復帰を支援すべきだ。

(小林真由美)

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