台湾では、5月20日から発足する民進党の蔡英文新政権が、総統就任演説で「一つの中国」の受け入れを表明するかどうかに注目が集まっている。

台湾の主権・独立を訴える「台灣獨立建國聯盟」が9日、台北市で記者会見を行い、蔡英文新政権に対し、「台湾は中国の一部であるという『一つの中国』原則を受け入れるべきではない」と訴えた。10日付「自由時報」が報じた。

記事によると、会見に登壇した台湾安保協会名誉理事長・元駐日代表の羅福全氏は次のように述べた。

  • 台湾と中国が「一つの中国」に合意したとされる「92年コンセンサス」は、歴史上に存在しない虚構だ。蔡政権は、中国との関係よりも、台湾人の立場を守る必要がある。

  • 近年台湾全土で行われた世論調査で、台湾人の7割は、「台湾は中国の一部分ではなく、台湾人のものだ」と考えていることが明らかになった。

  • 国民党から民進党に政権が変わった最大の意義は、「中国共産党の価値」ではなく、「台湾の民主的な価値」を再確立することにある。

中国が台湾のWHOの総会への参加を妨害?

現在台湾では、23日から始まる世界保健機関(WHO)の全加盟国で構成される「世界保健総会(WHA)」への招待状が、他の参加国から大幅に遅れて到着したことが問題視されている。

WHOから台湾に届いた招待状には、「『一つの中国』原則を反映して、『チャイニーズ台北』を、オブザーバーとして総会に招待します」と書かれていた。台湾を国として認めていない中国に配慮した文面になっていることは一目瞭然だ。

WHOと中国との間には、「台湾の総会への参加には中国の承認が必要」という密約があるとまで言われている。「一つの中国」原則を認めていない民進党新政権に対し、中国がWHOに圧力をかけ、けん制しようとしているとみられる。

中国の「嫌がらせ」から台湾人の人権を守るべき

台湾にとって、WHAへの参加は、医療や保健という基本的人権に関わるものだ。衛生や保健に関する貴重な情報や技術、あるいは新薬を即時入手することができなければ、国民の安全が脅かされる可能性がある。

台湾はこれまで、台湾を併呑したいと考える中国の嫌がらせを受けてきた。今回のような中国の台湾に対する不公平な対応について、国際社会は無関心でいるべきではない。

特に日本と台湾は、外交関係はなくとも、観光や文化交流、震災などの緊急時支援で親密な関係を作ってきた。日本には、台湾の国際社会への参加を支持することが期待されている。

(小林真由美)

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