中国とアフリカ諸国が参加する「中国アフリカ協力フォーラム」の首脳会合が4日、南アフリカのヨハネスブルグで開催された。中国の習近平国家主席は会合冒頭の演説で、アフリカの発展を支援するために今後3年間で600億ドル(約7兆3600億円)を拠出することを表明した。経済協力を通じてアフリカ諸国への影響力を拡大させる狙いがある。

中国とアフリカは主従関係にある

2000年以降、中国とアフリカの経済的な結びつきは強化されている。中国とアフリカにおける貿易総額が急速に増え、現在では2000億ドルを超えている。日本は300億ドル程度であり、日本の6倍以上に達する。国際通貨基金(IMF)のレポートによると、中国はアフリカの貿易額は、米国やEU諸国を凌ぎ、世界で最も強いパイプを築いている。

中国はアフリカ各国をインフラ整備などで支援する態度を見せながら、中国経済の減速で供給過剰になっている鉄鋼やセメントなどの販路を開拓しようとしている。

そのため、中国による開発援助は、地元経済が恩恵を受けないとの不満の声も広がっている。インフラ整備は中国企業が担い、中国製資材の使用を義務付けるなど中国の利益が先行する。中国人労働者を雇って事業を進めるため、現地では雇用も産業も生まれない。

中国とアフリカの貿易構造は、従属関係にある。中国はアフリカより資源を輸入し、それを電機、機械、自動車、鉄鋼などの工業製品化してアフリカに輸出しているのである。

経済の主従関係は軍事的な植民地化につながる

今回の支援表明は、アフリカが軍事的にも中国の「植民地」になるリスクをはらんでいる。インフラ開発や援助の見返りに、中国の軍事基地拠点が作られるのだ。

たとえばアフリカ北東部に位置するジブチには、アフリカ諸国の軍事支援やテロ対策の拠点として米軍が駐留している。日本も、ソマリア沖のアデン湾に出没する海賊から日本に向かう船舶を守るために自衛隊を派遣している。このように日米両国が基地を設けて部隊を配置しているが、今年に入って大きな変化が起こった。ジブチのゲレ大統領が中国と軍事基地建設について話し合いを進めていると述べたのだ。さらに12月に入り、ジブチのユスフ外相は中国海軍初の軍事拠点が建設されることを明らかにした。アフリカでも中国は軍事拡張を進め、存在感が増すこととなった。今後、日米連合と中国の勢力争いが激化しそうだ。

これまで中国はジブチに空港や港湾、鉄道などのインフラ整備に90億ドルを供与してきたという。活動拠点を構えてアフリカやインド洋での存在感を高めたい中国と、さらなる援助を引き出したいジブチとの思惑が一致したと見られている。

中国はアフリカ諸国で、経済力を背景に軍事拡張を狙っている。日米はアフリカ諸国に対して、中国への経済依存が軍事的な「植民地」へと陥るリスクをはらんでいることを伝え、中国依存から脱するように説得していくことが必要である。中国の世界支配という野望を打ち砕くために、アフリカにおいても日本は米国と共同して、中国包囲網を構築すべきである。

(HS政経塾 油井哲史)

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