中国は、アジア、アフリカの各国に経済面からの関係強化を働きかけているが、中東のイスラエルやヨーロッパ圏のギリシャにも接近している。

イスラエルは3月31日、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を表明した。中国企業も、イスラエルの新たな港の建設など、大型インフラ事業を次々と落札している(7月31日付朝日新聞)。

イスラエルは中国の経済成長と巨大市場に、そして中国はイスラエルの持つサイバーセキュリティ分野などの高い技術力にそれぞれ魅力を感じているようだ。

イスラエルは建国以来、アメリカから軍事的援助を受け、事実上の同盟関係にあった。だが7月、アメリカをはじめとする6カ国がイランとの核合意に至った。この合意ではイラン側が核関連活動を縮小する代わりに、欧米はイランに対する制裁を段階的に解除することとなった。しかし、イランを警戒するイスラエルのネタニヤフ首相は、この合意ではイランが核兵器開発を進めることが可能だとして、「衝撃的な歴史的誤り」と批判している。

つまり、イスラエルとアメリカの関係にひびが入り始めた隙に、中国の手が伸びてきた構図だ。

一方、ギリシャがユーロ圏離脱をまぬがれたことで、中国はギリシャへの投資も強めるとの見方もある。ギリシャ最大貿易港「ピレウス港」に対して、海運最大手の中国遠洋運輸集団(COSCO)が2008年から出資していたが、今後、AIIBも投融資を検討する可能性が出ている。

加えて中国政府が、アテネ空港に30%程度出資する方向でギリシャ政府と交渉に入り、ギリシャ軍が保有する「揚陸艦」4隻を買収する案が出ているという報道もある(7月31日付産経新聞)。ただ、1989年の天安門事件を受け、EUは中国に対して武器の禁輸措置を取っているため、中国はまず、この禁輸の解除を求めて交渉してくる可能性が高い。

ギリシャは、中国から欧州への要所だ。通貨もユーロなので、中国にはギリシャをユーロ圏貿易の中継地とし、中国の推進する「一帯一路」構想における欧州への玄関口とする思惑があるとの意見もある。経済的危機にあるギリシャが、目先の利益を求めれば、チャイナマネーに付け入られる危険性が高い。

中国が世界各国に投資を進めている背景には、自国経済の低迷に危機感を覚え、一党独裁体制を維持するために、諸外国を経済的に取り込もうという意図が見える。まずは相手国への投資を行い、中国企業が進出し、その国の富を奪っていくという作戦だ。

経済的に協力関係を築いているだけだと思っていたら、いつの間にか実質的に中国の"植民地"になっていた、ということは十分に起こり得る。中国と経済的結びつきを強めすぎることに、各国はもっと危機感を持つべきだ。(泉)

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