安倍晋三首相はアジア開発銀行(ADB)と連携し、アジアのインフラ整備に今後5年間で、現在の3割増しの約1100億ドル(約13兆2000億円)を投じることを表明した。
東京都内で開かれた国際交流会議で首相は、「長い目で見て質の高いインフラをアジアに広げていきたい」と発言。演説中、「質」という言葉を7回使用し、アジア投資における質の重要性を強調した。
1100億ドルの内訳は、(1)ADBの融資枠で約530億ドル(約6兆3600億円)(2)国際協力機構(JICA)の投融資や無償資金協力で300億ドル超(4兆円超)(3)国際協力銀行(JBIC)などの出融資で約200億ドル(約2兆4千億円)――と見込んでいる。
中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に対抗
今回の資金援助は、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立を目指す中国に対抗する狙いがあると見られる。日米主導のADBを強化することで、アジア地域での中国の台頭を抑えたい、というものだ。それは、1100億ドルという投資額が、AIIBの設立時の資本金とされる1000億ドルとほぼ一致することからもうかがえる。
中国は、戦後アメリカが築いた国際政治システムを中国共産党が支配するシステムに入れ替え、軍事的にも経済的にも、アメリカを超える大国となることを目指していると言われている。AIIBの設立はその計画の一環だ
日本こそアジア投資を主導すべき
会議で安倍首相は「アジアには、毎年100兆円にものぼる旺盛なインフラ需要があります。『質も量も』。二兎を追う野心的なチャレンジこそ、アジアには似合います」とも述べた。日本が得意の「質」重視の投資を行うことで、中国にAIIBの運営方針の改善を促しているとの見方もある。
首相の発言にもあったように、アジアの途上国はインフラ整備に莫大な資金を必要としており、先進国からの融資や援助を望んでいる。
しかし、AIIBから投融資を受けた国は、次第に中国の植民地と化していきかねない。現に、中国の進出が進むアフリカでは、中国はアフリカから原油や鉱物、食料などの資源を大量に購入し、中国人がインフラ整備を行い、中国産の工業製品などを売りつけている。これでは、その国に産業も雇用も生まれない。
首相が演説で「日本の技術を単に持ち込むのではなく、人を育て、しっかりとその地に根付かせる。これが、日本のやり方です」と発言した背景には、こうした中国の投資の現状がある。様々な問題を抱える中国でなく、日本こそ、アジアに対する投資の主導権を握るべきだ。日本は世界一の債権を持つ国であり、個人資産は1600兆円以上に上る。途上国に資金を供給し、産業を発展させる役割を果たせるはずだ。
日本が世界の繁栄に責任を持つ中で、アジア・アフリカ諸国で、円建ての国際決済を増やすことも可能だ。日本が上手く導けば、各国の政府や企業は、円建てで国債や社債を発行し、資金を調達できるようになるだろう。こうして円を基軸通貨化し円経済圏を築くことで、日本は中国の世界支配という野望を打ち砕くことができる。(泉)
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