2016年1月号記事
特集
2016年 笑う首脳、泣く首脳
安倍首相、オバマ大統領、習近平国家主席、プーチン大統領……。自分の生活とはあまり関係ないようにも見えるが、彼らの考えが、私たちの会社や生活、そして財布の中身にまで大きな影響を及ぼしている。各国首脳の「正義」について考えながら、2016年を乗り切るヒントを探る。
contents
2016年 国民全員が標的!
マイナンバーであなたの財産が奪われる
2016年1月から、日本に「マイナンバー」という名の共通番号制が導入される。
「多くの国で導入されている」「困るのは税金をごまかしている金持ちだけ」との声もあるが、本当か。
(編集部 小川佳世子、河本晴恵、山本泉)
そもそも、マイナンバーとは?
マイナンバーは、国民全員に割り振られる12ケタの番号です。
現在はバラバラに管理されている年金や雇用保険などの情報を1つの番号で管理できるようになります。
政府は、マイナンバーによって、役所での作業効率が良くなり、国民の手続きも簡単になるとしています。
また、脱税や不正受給を防止でき、本当に困っている人に支援ができるようになると説明しています。
2016年1月から利用が始まる分野
- 雇用保険や健康保険に関する書類
- 税務当局に提出する申告書・法定調書
- 被災者生活再建支援金の支給
※年金は利用開始を延期
2018年以降導入予定もしくは検討されている分野
- 銀行口座の開設(当面任意)
- クレジットカードとの一体化
- 運転免許証との一体化
- 車の購入時の手続き
- 健康保険証との一体化
マイナンバーの導入を目前にして、各企業は社内のセキュリティを強化したり、専門家に委託するなど対応している。
もし、社員から集めたマイナンバーの情報を漏らせば、4年以下の懲役か200万円以下の罰金が科せられる罰則規定がある。加えて、企業の社会的信用も大きく損なわれ、訴訟で賠償金を請求されるリスクもあるのだ。
数百万円の設備投資
マイナンバー対応の実態について、複数の企業関係者に聞き取り調査したところ、その負担の重さが明らかになった。
ある中小企業の人事担当者は、マイナンバーの管理用に30万円のハードウェアを購入した。「マイナンバー対応のため、今後1年間で350時間を費やす見込みです」。この担当者は、これまでもマイナンバー関係のセミナーを受講した。こうした研修費を負担するのも企業だ。
大企業の負担はさらに重い。
A社では、数千人の社員と扶養家族のマイナンバーを集めるだけでも一苦労で、登録作業は外部に委託する予定だ。「事務代行料は1人600円で、1万人分だと600万円。初期費用でこれだけかかります」(A社社員)
企業の税務をサポートする税理士事務所のコストも増える。
ある事務所は設備投資に680万円かかったため、今後、顧客に年数万円を請求するという。別の税理士も、「セキュリティの高いシステムで、200万円くらいかかった」と話す。
帝国データバンクの調査(注1)によると、マイナンバー対応にかかるコストは平均で1社約100万円という。だが、マイナンバー対応のための費用は、会社の利益を生むものではなく、不景気の中、重くのしかかる。ある中小企業の営業マンは「うちの会社で100万円の利益を出すには、1000万円の売り上げが要る」と嘆いた。
(注1)2015年5月19日帝国データバンク「マイナンバー制度に対する企業の意識調査」
マイナンバーにまつわる疑問の声に答えます
国民の財産権と政治参加の自由を守ろう
インタビュー・山崎文明氏 / 山田順氏