菅首相は世界の原子力産業まで破壊しようとしている

2011.05.13

以下は、12日付の英字紙ジャパン・タイムズに掲載された米ハワイ在住の日系アメリカ人の投書だ。

「なぜ浜岡原発を止めるのか? なんてバカなことをと思った人もいるのでは? 菅直人首相は浜岡原発が大地震や大津波の被害を受けることをえらく心配しているようだが、だったら、なぜ他の原発も止めないのか? 電力不足の中で日本の産業や国民の生活はどうなるのか? 菅首相は今すぐ辞任し、その愚かな行動を止めるべきだ」

菅首相の「原発破壊運動」は、世界にも波紋を広げている。

12日付日経新聞朝刊では、アメリカの保守系シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のジョン・ハレム所長が、東電に損害賠償を求める新たな立法措置が、世界の原子力産業に大打撃を与えるものだとして警告している。ポイントは以下。

  • (菅政権が)間違った政策対応を取った場合、より長期的な損害を生み出す。
  • 原子力による損害を補償する枠組みをつくるための立法措置がなされようとしているが、原発を運営する企業に対して、被害者への賠償に上限を求めていない。
  • これは政治的にはいいかもしれないが、原子力政策としては誤っている。電力会社の信用格付けを日本だけでなく、世界でも著しく損なう。いかなる投資家も上限のない責任制度に伴うリスクには耐えられない。
  • 東電の信用は崩れ落ちる。日本の原子力産業全体の信用も消し飛んでしまう。
  • 世界の原子力関連市場で、日本は中核技術・部品の供給源となっている。その主導的地位を失うだろう。

政府は12日、福島原発事故に伴う東電の損害賠償支援の枠組みを大筋で決めた。これは、政府などが出資する新機構が資本注入を受けながら、東電がすべての損害賠償の責任を負うものだ。

東日本大震災後、東電も含め各電力会社の株価が下落。社債も信用力が大きく低下している。ハレム氏が懸念しているのは、それが波及し、世界の原子力産業にも資金が集まらなくなることだ。その懸念は、浜岡原発の停止でさらに強まっている。

菅首相は今回の原発事故を「政府にも大きな責任がある」と述べているが、実際の行動は東電に全責任を押し付けている(原子力損害賠償法では、異常に巨大な天変地異で損害が生じた場合、電力会社は責任を免れるという規定があるが、菅首相はこの規定を適用しないと言っている)。それが回りまわって、日本だけでなく、世界の原子力産業までも“破壊”しようとしているのだ。

冒頭のアメリカ人が言うように、菅首相の愚行を止めなければならない。(織)

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