赤字地方債の発行、続けていいの? 地域の自由を守るため、「減税」の道がある

2020.10.06

新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、来年度の国と地方の税収は大幅に減ることが見込まれている。

総務省は来年度予算案の概算要求で、地方交付税について今年度と同程度の16兆2000億円を要求する一方、来年度の地方の税収は今年度より3兆6000億円減ると見込んでいる。赤字地方債にあたる「臨時財政対策債」は約3兆7000億円増の約6兆8000億円に膨らむ見込みという。

国・地方ともに財政が悪化する中、さらなる「増税」の可能性も高まっている。しかし、際限のない増税は、民間の活力を奪い、地方を疲弊させてしまう。

今回、JTR日本税制改革協議会会長が、地方における減税の必要性や地方議員がやるべき仕事について語ったインタビューを紹介する。

※2019年10月号本誌記事を再掲。内容や肩書きなどは当時のもの。



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増税はNO! 工夫を凝らして減税し、 地域の"自由"を守ろう。

JTR日本税制改革協議会 会長

内山 優

プロフィール

(うちやま・まさる)地元・埼玉県行田市の青年会議所や中小企業の経営者を経てJTRを設立。「水曜会」議長。2007年、アトラス財団によるTempleton Freedom Awards Grantの日本人初の受賞者。

国や地方は1円たりとも、税金を上げてはいけません。

地方税は各自治体が法律や条令をつくり、制定できます。代表的なものとしては「森林環境税」があります。高知県が最初に創設し、今は約36の自治体が類似税を導入。1人年間500円ほどが徴収されています。

「緑を守るため」なら納税者も納得するでしょう。しかし高知県で集めた税金の約半分は、大手広告会社に委託した「緑は大切」という啓蒙広報に使われました。さらに4分の1は森林整備の道路整備に、残りの4分の1のうちの10%ほどだけが、森林環境保護活動を行うNPOに分配されたのです。

埼玉県も「埼玉県みどりの環境税制」の導入を検討しましたが、上田清司前県知事が「県民にこれ以上の負担を求めることは現実的ではない」と増税はせず、緑の保全と創出を目的とした「彩の国みどりの基金」を創設。財源には、自動車税の税収から1台あたり約500円を繰り入れました。基金は基礎自治体やNPOなどが森林保護のために活用しています。何かを始めるのに、必ずしも増税は必要ないという好例です。

官民連携で赤字を減らす

インフラ整備などのために、「国から予算を引いてくる」ことばかりに情熱を傾ける地方議員もいますが、そもそも「住民の生活や重要事はすべて役所が保証・解決しないといけない」という考え方が間違いなのです。

岩手県の旧滝沢村では、村民に道路の舗装を要請された村長が、「予算がないから皆でやろう」と材料を準備したところ、村民が舗装を始め、仕事を奪われたはずの土建屋まで重機を出しました。かつては日本中がこうでした。皆が必要なものは地域の篤志家が提供していたのです。

公務員が多すぎることも税金のムダ使いです。明治時代から人口は3.5倍に増えましたが、公務員の数は20倍以上です(下図)。

埼玉県富士見市の前星野信吾市制では、職員の新規採用を半分にして緩やかに人員を削減し、40億円の市債残高を減らしました。

地域の「お金の自由」を守れ

7月25日、埼玉県上田前知事の税政策を称え、JTRから「納税者の味方賞」が贈られた。上田知事が16年間の任期で森林環境税の創設をしなかった結果、埼玉県の法人、個人の財産約400億円が、新たな"収奪"から守られた。

減税のためには地方も「小さな役所」を目指すべきです。法律や条例のリストラをしましょう。そうすれば、付随する税金や補助金も廃止できます。

民主党政権は批判されていますが、私は「事業仕分け」は意味があったと思います。問題は、その仕分けされた組織や事業が存在する裏付けとなる「法律」を廃止できなかったことです。

税金が減れば、自由に使えるお金が増えます。地域住民の自由を守り、増やすことが地方議員の仕事なのです。(談)

【関連書籍】

『財政再建論 山田方谷ならどうするか』

幸福の科学出版 大川隆法著

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『ザ・リバティ』2019年10月号』

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