2006年に打ち上げられたNASAのニュー・ホライズンズ無人探査機が、10年近くの年月をかけて、冥王星まで到達した。ピアノほどの大きさの探査機は、冥王星から約1万2000キロほどの距離まで接近し、惑星表面の画像を撮り、赤外線や紫外線センサーなどで惑星の大気、地質、そして熱分布などを測定した。

ニュー・ホライズンズはその小ささゆえ、減速するための燃料がなく、冥王星の衛星軌道に乗ることができない。そのため、探査機は時速6万キロほどの速度で冥王星を横切り、接近できた時間はごくわずかだった。

それでもNASAの科学者たちには新鮮な発見があった。

例えば、冥王星の表面を見ると、クレーターが見当たらないのだ。大量のクレーターがある月などを見ても分かるように、太陽系で隕石の衝突は頻繁に起こる。それなのにクレーターがないということは、冥王星ではクレーターの痕跡を消すことができる、大陸移動に似たことが起きていると考えられている。しかし、地表を動かすためのエネルギー源が何なのかは定かではない。

これ以外にも、冥王星の大気の性質、火山活動の可能性、地表を覆う窒素やメタンの氷などが確認されている。

NASAの許可が下り次第、ニュー・ホライズンズは今後、太陽系外縁部にあるカイパー・ベルトを探査する予定だ。カイパー・ベルトには、太陽系の創世記から存在する隕石や氷の塊があり、太陽系の初期がどのようなものであったかの手がかりをつかめると考えられている。そのため、冥王星やカイパー・ベルトを含む太陽系外縁部の探査は、NASAにとって優先順位が高い事業だ。

NASAは一歩ずつだが、探査・研究の範囲を広げている。

日本も最近、2030年代後半を目処に火星への有人探査計画を掲げた。これは当然やる価値がある取り組みだが、これからの宇宙探査には火星以降のことも視野に入れた計画が求められる。いまから太陽系外縁部の性質を探査しておけば、火星の有人探査が実現した後のビジョンも見えてくるはずだ。また、恒星間航行に向けた宇宙技術の研究もいまのうちに始めておくべきだ。

日本は、宇宙開発に長期的なビジョンや目的を持ち、宇宙産業・宇宙技術の発展を促すべきではないだろうか。人類はまだ太陽系内の地球付近をうろうろしているだけであり、SFなどで見る恒星間航行には手が届かない状態だ。そのように大きな目的を持ったとき、それに向けたどんな努力をすべきかが見えてくるのではないだろうか。

宇宙時代は、幕を開けたばかりであり、日本は、その時代をリードできる数少ない国の一つになれるかを問われている。(中)

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