欧州中央銀行(ECB)が22日、今年の3月から2016年の9月までの間に、毎月600億ユーロ(全体で1兆ユーロ以上)もの国債を買い上げるという、大規模な量的緩和を始めることを決めた。

ユーロ圏は現在、日本と同じように、長年のデフレに苦しんでいる。特に南欧州の国々は、2012年の欧州危機以来、ドイツが強要する緊縮財政のもと、デフレと、経済低迷で苦しんでいる。ここ数年、南欧諸国はデフレ脱却のため、ECBに量的緩和を始めるよう求めてきたが、ドイツが反対し続けたため、実現しなかった。

そんな南欧州の国の一つが、25日に総選挙を控えているギリシャだ。選挙前の統計では、急進左派連盟(Syriza、シリザ)が、現首相アントニス・サマラス氏率いる新民主主義党に、5.3%の差で優勢である。

シリザ党は、経済の悪化を招いている緊縮財政をやめ、2400億ユーロもの借金の返済を反故にすべきだと主張している。ドイツは、もしギリシャがそのような選択をした場合、ユーロ圏を追い出される可能性があると、ほのめかしている。

ECBの量的緩和は、遅きに失した感があるが、少なくとも短期的にはデフレの波を押し返すことができると思われる。

だが、米金融企業チャールズ・シュワブの投資戦略家であるジェフ・クライントップ氏によると、ユーロ圏の国々が大々的な経済改革に乗り出さない限り、今回の量的緩和は長期的な解決策にはならないと主張する。

例えば、スペインやアイルランドは、労働者を解雇しやすいようにして雇用の流動化を図ったり、事業への参入障壁を取り除くなど、規制緩和を行って初めて、経済が好転しつつあるという。

国が金を借りてバラマキ政策を行い、その負債をECBに押し付けるだけではだめなのだ。

だが、シリザ党は明らかにこれを理解していない。党の政策を見てみると、「福祉政策改革反対」、「電気代の無料化」、「富裕層への増税」、そして「ギリシャの財政をECBに全て肩代わりしてもらう」など、およそ「改革」や「自助努力」といった言葉とは無縁だ。

シリザ党は、世界各地で台頭している左翼思想の典型と言える。国民が政府に依存し、政府が他国に依存するような状態が、長期的に維持できるはずはない。

ギリシャは、シリザ党の台頭でユーロ圏から離脱することになって、初めて「自助努力」以外の選択肢がないことに気付くのではないだろうか。(中)

【関連記事】

2015年1月6日付本欄 ギリシャ危機2.0 総選挙後にユーロ離脱はあり得るか

http://the-liberty.com/article.php?item_id=9018

2014年11月19日本欄 岐路に立つEU アベノミクスの教訓をどう読み解く

http://the-liberty.com/article.php?item_id=8745

Web限定記事 アベノミクスはなぜ失敗した? 資本主義はもはや限界なのか?

http://the-liberty.com/article.php?item_id=8838