新年、明けましておめでとうございます。
2015年がどういう年になるのか考えてみたいと思います。政治や経済の動きとして何が予定されているのかを見ると、少しは見通しが立ってきます。
1月には、相続税の最高税率が50%から55%に引き上げられるとともに、課税される対象も広げられます。
10月には、社会保障と税の「共通番号(マイナンバー)制」が始まります。国民一人ひとりにどんな収入や資産があるのか政府がすべて管理できる体制へと向かっています。
どちらも、年金や医療などの社会保障を成り立たせようと、政府が国民からどんどん税金を取れるようにしようという動きです。
イギリスの「フィナンシャル・タイムズ」紙に年末、「西側はうつ病か」という記事が出ていました。高齢者の「自分たちの全盛期は終わった」という考え方が、「欧米の全盛期は終わった」という悲観論を生み出している。だからこそ、欧米の人々は経済を成長させるために何か新しい手を打つことよりも、手厚い社会保障を維持し、巨大な借金を抱えてしまっているという趣旨でした。
日本も同じ「うつ病」かもしれません。政府が出す高齢者(65歳以上)の社会保障のお金は夫婦2人で考えると、年に約560万円かかるそうです。子供が両親の面倒を見る場合、500万円以上出せる家庭はそうあるわけではありません。日本の社会保障はそもそも成り立たないところまできてしまっています。実態を知れば知るほど、「うつ病」になってしまうのは当然かもしれません。
一方で、明るいニュースもあります。
3月に北陸新幹線が開業し、東京から金沢までを2時間半で結びます。今まで北陸への移動手段は航空便が大半でしたが、空港へのアクセスや待ち時間などを考えると、新幹線のほうが断然便利になります。北陸は関西圏との結びつきが強かったわけですが、東京のほうがより近くなり、新しいビジネスや消費行動が生まれるのは間違いありません。
開業50年を迎えた新幹線は、日本各地を一つに結びつけ、日本の経済規模を何倍にもすることに貢献してきました。2016年春には北海道新幹線の開通も予定されています。日本列島が新幹線で結ばれ、日本経済は“新しい次元"に入っていきそうです。
それを可能にした出発点は、戦時中に戦闘機を設計したり、ゼロ戦の機体の揺れの制御技術を確立したりした技術者たちが、試行錯誤しながら「夢の超特急」の実現に力を合わせたことにありました。
新幹線だけではなく、航空機も負けてはいません。今年後半には、ホンダがビジネス・ジェット(7人乗り)の正式な販売を始めるそうです。ホンダ・ジェットの挑戦は1986年にスタートしたので、約30年越しのプロジェクトです。航空機のエンジンをゼロから設計し、動かせば壊れるというような実験を繰り返し、主翼の上にエンジンを付けた今までにない機体のデザインにたどりつきました。
自動車などの日本のものづくりの強みに、航空機も加わろうとしているのが今年だということになります。
重くのしかかる「うつ病」を吹き飛ばすためにも、こうした日本の科学技術にもっと磨きをかけていかなければなりません。
その意味では昨年、小保方晴子さんによるSTAP細胞の再現実験がうまくいかなかったことは、非常に残念な出来事でした。ただ、関係者の話を聞くと、単に「小保方さんが論文に書いた方法では再現できなかった」ということだけだそうです。検証実験の責任者も「すべてのことを個々の条件からもう一度研究としてやるわけにはいかない」「STAP細胞がないから止めるわけじゃなく、検証実験の範囲で再現できなかった」と語っていました。「予想をはるかに超えた制約の中での作業となり、細かな条件を検討できなかった事などが悔やまれます」という小保方さん本人のコメントにもそれは表われています。
つまり、検証実験は限られた方法で行われただけで、小保方さんが昨年4月の記者会見で言及していた、STAP細胞を作り出すための「最適条件」が試みられたわけではないということです。
発明王エジソンは、白熱電球を完成させるための実験を何万回と行った後、こう語りました。「私は実験において失敗など一度たりともしていない。これでは電球は光らないという発見をいままでに、2万回してきたのだ」
一部マスコミが言うように小保方さんが「確信犯的な嘘つきで詐欺師」ならば、STAP細胞は存在しません。ただ、そうではない可能性が残されているならば、エジソンのように何万回という実験を繰り返すしかありません。
小保方さんが所属していた理研を所管する下村博文文科相は、「STAP細胞が存在しないと確定した」と述べていますが、政府がどう判断しようが関係ありません。
現代の日本の繁栄は、日本の技術者や研究者たちのチャレンジ精神と「失敗」の上に築かれてきました。「日本は全盛期を終え、社会保障を手厚くする中で衰退するしかない」という「うつ病」を吹き飛ばすには、「可能性があるなら追求してみよう」というチャレンジ精神を復活させるしかありません。
昨年12月に発刊された幸福の科学総裁・大川隆法著『智慧の法』では、大きな政府をめぐる問題についてこう指摘されています。
「国民の側として忘れてはならないことは、『大きな政府は、必ずと言ってよいほど、国民の堕落を招く』ということです」
「『繁栄への大戦略』は、国家が立てればよいというものではありません。それを立てるのは、国家の構成員であるところの国民であるべきです」
「自立した一人ひとり、個人個人の『努力・精進と忍耐』『学習を続ける態度』が求められるし、そうした人を数多くつくれた国が、世界を守るのです」
繁栄をもたらす「智慧」について探究し、具体的に行動する1年にしたいものです。
ザ・リバティ編集長 綾織次郎