来年、消費税を10%に増税するかどうかに注目が集まっているが、実は他の増税も静かに進行している。

日本では来年1月1日から、これまで6000万円までだった相続税の非課税枠が3600万円になる。さらに、2億円超、3億円以下の税率は40%から45%になり、6億円以上の高額相続の最高税率は55%へと上がる予定。相続税を払うため、「資産家が不動産を売って現金を作る」といった事態も増えそうだ。

財政再建を名目に、富裕層への課税が進んでいるのは日本だけではない。

5月のクーデター以後、軍事暫定政権が主導するタイで、政権トップのプラユット首相は、12日の施政方針演説で年内にも相続税を導入すると明言。地元紙は、「税率は10%程度で調整中」と報じた。タイではこれまで何度も相続税が議論されてきたが、国会議員の多くが富裕層であるため可決されていなかった。今回の相続税導入の理由として、タイの混乱の一因である経済格差を解消し、国民の支持を得るという目的があると考えられる。

一方、アメリカでは、ブッシュ政権時代に、2010年に相続税を廃止する法律を通したが、オバマ政権になって、2010年に最高税率35%の相続税を復活。2013年からは40%へと引き上げられており、富裕層への課税は強化されつつある。

しかし、相続税はもともと、マルクスが掲げた「相続の廃止」に基づくことを振り返る必要があるだろう。ここには、一部の資産家が私有財産を持つことを「悪」だとして嫉妬し、奪い尽くす考え方が入っている。国益の観点から見て、相続税の増税は本当に適切なのだろうか。

相続税が上がると、富裕層の「国外脱出」が増える。実際に、フランスで2012年に誕生した左派のオランド政権が「所得税の最高税率を75%にする」という政策を掲げたところ、国籍離脱者が続出。その中にはルイ・ヴィトンCEOや有名俳優など、フランスを代表する有名人も含まれており、結果、増税は見直しとなった。

私有財産という形で資本を集中させ、有益な事業に投資すれば、これまでにない新しい付加価値を産み出せるようになる。しかし、富裕層が逃げ、付加価値を生み出そうとする起業家がいなくなれば、国は貧しくなる一方であり、長期的な税収が増えることはない。

相続税の思想的背景を踏まえても、そして増税に走る諸外国の例を見ても、日本が財政再建を目指すなら、富裕層の資産をむしりとる方向に未来はない。むしろ、雇用を生み出し、納税できる人を増やすため、投資や新規事業を推奨する方向を目指すべきである。(晴)

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