アメリカのシンクタンクが、外国政府から多額の寄付を受け、その国の意見に沿った調査結果を発表している疑いがあると、このほどニューヨーク・タイムズ(NYT紙)が報じた。

同紙の調査の結果、ブルッキングス研究所や戦略国際問題研究所など28のシンクタンクが、外国政府などから過去4年間で少なくとも9200万ドル(約98億円)の寄付を受けたことが明らかになったという。

この記事で、主に取り上げられた「外国政府」は、ノルウェーと日本。ノルウェーは、森林保護の支援金の増額を米政府に働きかけるよう、シンクタンクに依頼。日本から寄付を受けたシンクタンクの調査委員は、環太平洋経済連携協定(TPP)に関して、日本側の主張に沿う発言をしたという。他に国名が挙げられているのは、アラブ首長国連邦、カタールなどだ。

しかし気になるのは、同記事が、アメリカで盛んにロビー活動をしている中国や韓国について触れていないことだ。

実は、この同じ記事のウェブ版には添付資料があり、ブルッキングス研究所が受け取った寄付額の一覧が掲載されている。その中には、韓国が日本と同じぐらいの金額を寄付していることや、中国が他のシンクタンクに寄付していることが記されている。

NYT紙はシンクタンクの中立性に疑問を投げかけたわけだが、その記事の本文中で、中国や韓国について触れていないNYT紙自身の中立性にこそ疑問符がつく。

たとえば、今年1月、中国の大富豪・陳光標氏がNYT紙の買収に名乗りを上げたと報じられた。交渉は決裂したが、陳氏は2012年と13年に、同紙上で大々的な広告を打っていた。その内容は「釣魚島(魚釣島)は中国領」「安倍晋三首相は靖国神社に参拝すべきではない」という、中国共産党の主張そのままだ。広告収入の減少に苦しむ同紙にとって、陳氏の広告料は貴重な収入源だろう。

また、朝日新聞が従軍慰安婦問題の報道の一部を撤回した事実について、NYT紙と米ワシントン・ポスト紙は8月17日までに、一切報じていない(「日経ビジネスオンライン」同月22日付記事)。ポスト紙もまた、月に1、2回、中国共産党中央宣伝部が直轄する中国日報の英語版を「新聞」として折込み、その代金として年に数百万ドルを得ている。同月27日には、「元慰安婦」を紹介する記事を載せた別刷りを折込んだ。

NYT紙が指摘するように、シンクタンクの意見が、寄付者の影響を受けていることに注意する必要はあるかもしれない。だが新聞もまた、広告主の意見に左右されている可能性がある。情報の受け手は、良くも悪くも情報には、常に発信者の意図が込められているということを意識すべきだ。(居)

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