日中戦争の引き金となったとされる盧溝橋事件から77周年を迎えた。

中国の習近平・国家主席は事件が起こった今月7日、北京郊外で開かれた77周年の記念式典に出席。同事件当日の式典に、最高指導者として参加したのは、習氏が初めてだった。式典で習氏は、当時の蒋介石が率いた中国国民党の「抗日戦功」について繰り返し言及。敵対関係にあった中国共産党の指導者が、国民党の功績を評価するのは、前例のない珍しい出来事だった。

同日、中国国民党が逃げ込んだ台湾の台北市内でも、盧溝橋事件の記念イベントが催され、国民党主席でもある馬英九総統が、来年に「抗日戦争記念館」や「慰安婦歴史展示館」を設ける意向を表明。「抗日戦争勝利70周年」の節目となる2015年は、「台湾にとって非常に重要だ」と強調した。

馬総統はこのところ、歴史問題で日本に対して厳しい姿勢を示しており、今年4月にも、慰安婦だったとされる台湾女性2人と面会している。今月3日には、アメリカ・カリフォルニア州で、民主党のマイク・ホンダ米下院議員と会談。「慰安婦問題」で日本を非難する決議を主導したホンダ氏に、台湾もこの問題で協力することを約束した。

このように、「反日」を旗印に、中国と台湾が共闘する動きが進んでいる。

しかし、台湾と日本は統治時代に良好な関係を築き、互いに心理的距離が近い上、防衛戦略の上でも最重要の隣国だ。台湾からすれば、軍事大国・中国に対抗するには、沖縄の米軍と日本の自衛隊の協力が不可欠。一方、台湾が中国化し、中国海軍が本格的に太平洋に進出できるようになることは、日本にとっても国家存亡の危機を意味する。日台は「運命共同体」なのだ。

その台湾が、歴史問題で中国と共闘することは、日本としても無視できない。2015年は、日中戦争終了から70年の節目の年であり、中国の共産党と台湾の国民党が、かつての「国共合作(※)」のように、反日路線に走ることも考えられる。

今回、馬総統の「抗日戦争記念館」「慰安婦歴史展示館」の開設表明は、来年以降、中国や韓国のみならず、親日国とされる台湾からも、「抗日戦争」を仕掛けられることを暗示している。日本としては、「日本悪玉論」を正当化する「南京大虐殺」「従軍慰安婦」などの戦後の「冤罪」を、いち早く晴らすことが、より一層重要になってくる。

安倍晋三首相は今年4月、「戦後70年を迎えた段階で安倍政権として、アジアに向けた未来志向の談話を出したい」と、2015年に新たな談話を発表する考えを示しているが、それは、戦後の自虐史観を払拭する内容でなければならない。中国や韓国、台湾、アメリカからの批判に見舞われることは必至だが、それを恐れていては、現代の「抗日戦争」に負けてしまう。ピンチをチャンスと捉え、戦後70周年を迎える2015年に、歴史観を改めるべきだ。

(HS政経塾 森國英和)

(※)中国国民党と中国共産党の協力関係のこと。1924~27年には軍閥を討伐するため、1937~45年には日本との戦争のため、敵対する両党が協力した。

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