中国と台湾が結んだ「サービス貿易協定(ECFA)」に反対して、台湾の国会を占拠していた学生が10日、国会を退去し、占拠を終了した。

占拠騒動の発端となったECFAは、保険や運輸、医療などのサービス分野の市場開放をするもので、学生側は、交渉の不透明さに加え、協定が台湾の中小企業に不利な内容であり、中国依存が高まると警戒。こうした経済依存によって、台湾がやがて中国の一部として呑みこまれるのではないかという危機感を覚えた。与党の国民党が3月17日に、ECFAの強行採決に臨んだことに対して、反発した学生が、翌18日に国会を占拠した。

学生側は、協定の撤回を要求したが、王金平立法院長(国会議長)が、中国との協議を監視する新法を制定するまでECFAの交渉を進めないと、歩み寄りの姿勢を示したことで、学生らは、「一定の成果を挙げた」とし、国会を退去することになった。このことで、2008年から続けてきた馬英九政権の対中連携が一旦、遠のく形になったが、台湾防衛の要となる国防強化が不十分なままだ。

台湾の軍事費は、1994年にGDP比3.8%であったが、13年には2.1%に落ち込んでいる。政府予算を占める軍事費の割合も、94年の24.3%から13年には、16.2%になっている。馬総統は08年、対GDP比の軍事費を3%にすると約束したが、一向に守っていない。

長らく続いた国防費の減少で、台湾軍は改革を迫られた。馬総統は、中国との関係改善や若者の票の獲得を狙って、15年(後に17年に変更)を目途に徴兵制から志願制に完全移行すると発表。だが、兵士の給与が低いという待遇面や、昨年7月に起きた陸軍下士官の虐待死によるイメージ低下などを受けて、昨年の志願兵募集が56%にとどまった。このため、台湾国防部(国防省)は今年の1月、志願制後の兵力を21万5000人から17万~19万人にまで削減しつつ、下士官などの給与を上げると方針を修正。兵員確保のために打ち出した人件費の高騰が、減り続ける国防費を圧迫すると見られている。

一方の中国は毎年、10%超で軍事費を増大させ続けている。中国の軍拡に対抗するため、フィリピンやインドなどの多くの国が軍事費を増やすなか、台湾の軍事費削減は、誰の目にも危ういものに見える。中国からの侵略を真っ先に受ける台湾の地理的事情を考えれば、なおさらだ。

今回の抗議活動により、台湾は、一方的な中国の影響拡大を望まないという意思を示した。しかし、肝心の防衛政策が整わないばかりか、迷走している。台湾は、自国の国防力を強化するために、国防費を増やすだけではなく、友好国の日本やアメリカとの連携を深めなければならない。(慧)

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【関連サイト】

「THE FACT」 マスコミが報道しない「事実」を世界に伝える番組

http://youtu.be/yN57udlSxIs

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