台湾の馬英九政権が中国と締結した「サービス貿易協定(ECFA)」に反対する学生らが、本協定の強行採決を阻止しようと立法院の占拠を続けている。30日には総統府の前で大規模な抗議活動が行われる予定だという。

問題となっているECFAは、運輸や通信、保険、金融などのサービスを、中国が80分野、台湾が64分野の市場で開放することを定めている。この協定により市場が開放されると、中国から大量の企業や労働者が台湾に流入すると考えられており、台湾の企業が圧迫され、雇用環境も悪化すると指摘されている。

そのため台湾ではこの協定を「不平等条約」と見る声が多い。昨年6月に馬英九政権が中国政府と調印したもので、今年3月17日に台湾国内で最終同意を得る審議が立法院で行われた。馬総統が審議を打ち切ったことをきっかけに抗議運動に火がつき、翌18日、学生が立法院を占拠。一時、行政院(内閣府に相当)にも突入したが、これは治安当局に強制排除された。

本欄では、今回、この抗議活動に参加する台湾の学生に話を聞いた。

李さん(20歳・女性)は、「中国がECFAの締結により得られる利益はさほどないと思います。中国が台湾とECFAを締結するのは、政治的な理由です。中国は東アジアで最速で成長しており、近隣諸国へのプレゼンスを高め、東アジアのリーダーになろうとしています」と、中国の台湾に対する影響力が増すことに懸念を抱き、デモ活動に参加している。

楊さん(20歳・女性)は、「多くの人々が自由のために努力したため、今日では、私たちは街を歩くことができます。ですから、台湾は自由に感謝し、自分たちの主張を大声で叫べることに感謝しているのです」と語った。

この背景には、40年もの間、自由が抑圧されていたという歴史がある。台湾では、日本が第二次世界大戦の敗戦によって台湾から撤退した後、中国大陸から蒋介石率いる中国国民党政府の官僚・軍人が台湾の行政を担った。

しかし、本省人(日本国籍を持っていた、もともと台湾に住んでいる人)は、治安の悪化や政治の腐敗に抗議。これに対し、国民党は恐怖政治を敷き、1947年から87年までの間で、約28,000人の本省人が殺害・処刑され、財産が没収されたと言われている。台湾で言論の自由が認められたのは、李登輝総統(当時)が刑法を改正した92年のことだ。

前出の楊さんは、今回の抗議活動に国際的な注目が集まっていることに対し、「多くの海外メディアがこの状況を心配してくれていることに感謝しています」「私は、日本が私たちと共に正義と民主主義を守り、正しいと思う立場に立ってくれることを望んでいます。私たちは“暴徒"ではありません。私たちは、この国の未来がよりよくなるために、全員がなけなしの力を出し合っています」と述べている。

台湾の学生運動は、「自由と民主主義は座していて守られるものではない」ことを教えてくれる。東アジアの自由と民主主義を守るために、私たち日本人も、未来に責任を持って行動しなければならない。(飯)

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