台湾と中国が昨年6月に結んだサービス貿易の自由化協定をめぐり、台湾で馬英九政権に反発する動きが広がっている。18日夜からは、1000人以上の学生が、立法院(国会)の委員会で与党・国民党が同協定の審査通過を強行採決したことに抗議し、議場の占拠を続けている。

問題となっている「サービス貿易協定」は、サービス分野で中台双方の参入規制を緩和する目的で結ばれた。しかし、協定の調印が密かに上海で行われたことや、事前に内容が国民に十分説明されていなかったことで、野党・民進党と市民団体が反発していた。

政府は当初予定していなかった公聴会の開催などで事態の収拾を図ったが、「中国企業に雇用を奪われる」などと危惧する野党の審査妨害に対し、与党・国民党が強行採決に乗り出したことで反対運動に火がついた。

学生たちは立法院占拠の模様を、インターネットの動画配信サービス「ユーストリーム」を通じて世界に生中継しており、ツイッター上では「この台湾を助けてください」というメッセージを拡散している。

学生たちの行動は一見過激にも見えるが、支持する動きもあり、元総統候補の蔡英文・前民進党主席や文部省も占拠している学生を支持している。

今回の問題の背景には、このサービス貿易協定が、中国の台湾統一を進める動きだと警戒する、台湾の人々の警戒心がある。

台湾は1949年の分断直後から中国と激しく対立してきたが、馬政権になってからは対中融和にカジを切り、投資や貿易などの経済交流を急ピッチで進めてきた。このほど行われた、中台間の閣僚級会談は、政治対話への大きな一歩と言える。

習近平・中国国家主席は、「中華民族の偉大な復興」を掲げて、香港やマカオの返還で進めた「一国二制度」を台湾にも適用したい考えだ。台湾統一は、中国の悲願でもある。共産党指導部は、中国抜きでは台湾経済が成り立たなくなるよう工作を進めることで、台湾が中国との政治対話を拒めなくなるような状況をつくってきた。

台湾は民主主義や法の支配、人権の尊重や自由主義経済などの体制を確立している。中国の独裁的な政治体制や覇権主義、自治区での人権侵害などを見れば、中国にすり寄ることがいかに危険か、改めて考えるべきだろう。馬総統は中国による台湾懐柔に反対する国民の声をしっかりと聴き、これを機会に、親中政策を見直すべきである。(HS政経塾 横井基至)

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