中国では、第12期全国人民代表大会(全人代)が5日に開幕した。

初日、李克強首相は政府活動報告を読み上げた。その中で、日本の安倍政権を念頭に、「第2次大戦の勝利の成果と戦後国際秩序を守り抜き、歴史の流れの逆行を絶対に許さない」と述べ、日本に対する強硬姿勢を継続する立場を示した。

また、李首相は、台湾について、「1つの中国」の枠組みを守り、中台相互信頼を増進させていくことも示した。以前から、台湾は中国にとって、妥協の余地のない国益を意味する「核心的利益」であると明言しており、最終的には、香港と同様に中国領土に編入させようとしている。

しかし、「中国」の歴史を振り返ると、李克強が強調した「第2次大戦の勝利の成果と戦後国際秩序の維持」という言葉には明らかな矛盾がある。大戦後の歴史を見るに、正統な「中国」の国家は、「中華人民共和国」ではなく、台湾の「中華民国」の方であるからだ。

中国は、1945年9月2日のポツダム宣言への調印で、第2次世界大戦の戦勝国になったが、同宣言に調印した「中国」とは、蒋介石の中華民国のことだ。さらに、主要戦勝国として国連の設立に携わり、常任理事国になったのも中華民国だ。つまり、「第2次大戦の勝利の成果」が帰属するのは、台湾の中華民国の方なのだ。

このような国際社会における中台の位置づけは、1971年10月25日の国連総会決議2758により覆った。台湾政府は「中国」の代表権を剥奪され、代わりに、中華人民共和国が「中国」として、常任理事国の役割を担うようになった。その後、アメリカによる中華人民共和国の国家承認の動きに、日本を含めた西側諸国も同調し、中華民国との国交を断絶した。それ以降、「中国=中華人民共和国」が定着してしまっている。

李首相があくまでも、「第2次大戦の勝利の成果と戦後国際秩序」を守り抜くことが重要だと言うならば、「常任理事国の立場を台湾に返還せよ」と反論すべきだろう。

しかも、現在の中国は、年率10%を超える割合で軍事費を増やし、尖閣近海での領海侵犯、昨年11月の防空識別圏の設置など、現在進行形で海洋侵出を企てている。

戦後秩序を壊しているのはむしろ中国の方であり、この海洋侵出を抑止するためにも、日台関係の強化が非常に重要となる。

日本は、1970年代に現在の中国を国家承認して以降、台湾の中華民国との国交を断絶したままになっているが、先月17日、自民党の「日本・台湾経済文化交流を促進する若手議員の会」の会合で、「日本版・台湾関係法」の策定を目指すことが確認されるなど、日台関係の見直しが始まっている。

これに対して、中国外交部は19日の定例記者会見で、「台湾は中国の核心的利益に関わる」ことを理由に「断固反対」を即座に表明したが、日本は日台関係基本法の制定を急ぎ、本来の常任理事国である台湾との関係強化を進めるべきだ。(HS政経塾 森國英和)

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