日本政府は3日、北朝鮮に対する独自制裁の一部を解除する方針を決定した。拉致被害者らの再調査のために設置する北朝鮮の「特別調査委員会」が、金正恩第一書記をトップに置く最高指導機関である国防委員会から、国内すべての機関を調査できる「特別な権限」を与えられたことから、実効性のある調査ができると判断してのことだ。
解除するのは、北朝鮮当局者の入国禁止などの人的往来の規制、10万円超の現金持ち出しや300万円超の送金の届け出義務、人道目的の北朝鮮籍船の入港禁止の主に3点。制裁解除は特別委員会が設置される4日の閣議で正式決定される予定。
北朝鮮による拉致被害者の再捜査に向けて風穴をあけることができたという点では、今回の日本外交には一定の評価ができる。ただ、制裁解除が北朝鮮を"甘やかす"ものであってはならない。
日本政府が認定した北朝鮮による拉致被害者は17人いるが、韓国では、486人が北朝鮮による拉致被害にあっている。これはあくまで政府が正式に認定した人数であって、もっと多くの人が拉致被害にあっていると言われている。
そのため、日本の拉致問題のみを解決するのではなく、今回の制裁解除を機縁にして北朝鮮に情報開示を迫り、対北朝鮮包囲網を敷いていくことが必要だろう。具体的には、実際に拉致被害にあっている韓国と、アメリカとの協力関係を築くことが重要だ。
さらに言えば、約2300万人の北朝鮮国民も、金正恩第一書記や朝鮮労働党により自由を奪われているという点で、"拉致"されていると言える。北朝鮮国民の"救出"をも考えるならば、北朝鮮の解体と、その後の民主化・自由化まで含めた戦略を立てる必要がある。その際、日本が対北朝鮮外交でイニシアチブを取ることが求められるだろう。
北朝鮮による拉致問題について、「今度こそ解決してほしい」という日本国民の思いは強い。その日本国民の思いを反故にすることがないように、まずは拉致問題の全面解決を期待したい。
ただ、拉致問題が全面的に解決したとしても、日本は手放しで喜べる状態ではない。北朝鮮は、安倍首相が北朝鮮への制裁解除を公表した直後、日本海に向けて2発ミサイルを発射するような軍事国家だ。北朝鮮の体制を変えなければ、根本的に問題が解決したとはいえないだろう。また、日本人は救われたが、北朝鮮が軍事拡張を行ったということになっては元も子もない。
拉致問題解決の過程で、経済制裁の解除を外交カードに使いながら、北朝鮮に民主化・自由化を迫っていく必要がある。
北朝鮮を解体し、東アジアの平和と安定に寄与することができるかどうかは、日本政府の今後の外交努力にかかっていると言えるだろう。(飯)
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