中国近海からアメリカ本土に届く長距離弾道ミサイルを搭載した、最新鋭の原子力潜水艦を、中国が2014年末より前に完成させるという見通しを、米太平洋軍のロックリア司令官が25日、上院軍事委員会で証言した。

この証言は、中国が実戦配備を進めつつある、「晋級原子力潜水艦」と、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「巨浪2号」に関する言及とみられており、ロックリア司令官は、「中国は初めて海洋をベースにした核抑止力を持つことになる」と指摘している。

長距離弾道ミサイル搭載の原子力潜水艦の配備は、中国の核戦略において大きな意味を持つ。現時点では、中国からアメリカ本土まで届く長距離弾道ミサイルには、陸上から発射されるものしかない。このままであれば、中国がアメリカを攻撃する動きを見せた時点で、アメリカは中国のミサイル基地を先制攻撃することができる。つまり、中国への「抑止力」が働いているわけだ。

しかし、そのミサイルが潜水艦から発射される「潜水艦発射弾道ミサイル」となると話が変わってくる。

アメリカは、中国のミサイル発射地点を攻撃できなくなる。また、仮にアメリカが中国本土に核ミサイルを撃ち込んで、北京政府やミサイル基地を壊滅させたとしても、深海に潜んでいた中国の原子力潜水艦から、核ミサイルでアメリカ本土に報復される恐れがある。

つまり、中国にとっては、アメリカとのパワー・バランスを変化させる、大きな"進歩"となる。

これは同時に、日本の安全保障上のリスクを増す。日本が中国から何らかの攻撃を受けた際、日米安保条約に基づいて米軍が日本に加勢しても、中国はアメリカ本土への核攻撃をチラつかせ、アメリカを排除することもできるからだ。

一方で、アメリカ国民の反戦ムードは年々高まっており、昨年行われた世論調査でも、国民の半数が米軍のシリア介入に反対していた。同じように、今後、中国に核攻撃されるリスクを冒してでも日本を守るという選択を、アメリカ国民が支持するとは考えにくい。

こうした世論の影響は、米軍の対中姿勢を軟化させている。実際に、ロックリア司令官は2013年7月の記者会見で、「中国海軍が太平洋一帯で活動を強化しているが、アメリカ軍とはきわめて親密で、友好的な関係を作りつつある」と、対中融和姿勢を示した。財政赤字や医療保険などの国内問題に集中したいアメリカにとって、中国を敵に回すことは次第に割に合わなくなりつつある。

日本にとって、日米同盟の重要性は揺らぐことはない。しかし、同盟強化だけでは国を守れなくなるという現実も直視しなければならない。中国が長距離弾道ミサイル搭載の原子力潜水艦を完成させれば、その脅威はより一層大きくなる。日本は、「自分の国は自分で守る」体制を、早急に構築すべきだ。(光)

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