全国人民代表大会(全人代)が開会中の北京で開いた記者会見で、中国の楊潔チ(よう・けつち)外相が9日、尖閣諸島の領有権問題で日中関係が悪化している点について、「釣魚島(魚釣島の中国名)は中国固有の領土であり、日本がこれを盗み取り、占拠していることが根本原因」などと日本政府を非難した。

楊外相は、全人代の期間中に、副首相級で外交政策を統括する国務委員に昇格する予定。今回の発言は習近平政権の外交姿勢を代弁したと受け止められる。

この様子を詳しく伝えた10日付産経新聞では、楊外相は、日本が尖閣諸島を不法に盗んだとしつつ、これを戦後の国際秩序への挑戦だと非難したことを紹介。これについて記者は、「日本に対して『清国人から盗み取った一切の地域』の返還を迫った1943年のカイロ宣言など、戦後世界の枠組みに尖閣問題を押し込めようとする論法だ」と指摘している。

中国は今、第二次大戦後に戦勝国側が作った「日本悪玉論」という歴史認識を使って、アメリカをはじめとする国々と手を組み、日本を孤立させようとしている。

昨年9月には、総書記就任前の習近平氏が、北京でパネッタ米国防長官(当時)と会談した際、尖閣問題に触れ、「世界的な反ファシズム戦争の勝利の成果を否定し、戦後の国際秩序に挑戦しようとたくらむ日本の行為を国際社会は決して許さない」と語り、その約1週間後には、楊外相が国連総会の演説で、「釣魚島とそれに付属する諸島は、古来中国固有の領土。1895年に日本が盗んだ」と主張している。

日本政府は歴史問題を持ちだされると、すぐ弱気になって「自虐モード」に入ってしまう。だが、日本人が学校教育で習ってきた“歴史"は、あくまで戦勝国側が日本を悪者に仕立て、自らの正当性を誇示するために意図的に作った「創作」であるという事実を認識しなければならない。

たとえば、中国は一方的に「南京大虐殺で30万人が殺された」と主張しているが、東京裁判では、南京国際赤十字委員長だったマギー牧師が、それまでは膨大な被害を報告していたものの、いざ証言台に立つと実際に自分で目撃した殺人はたった1件しかないことを告白。他の証言者も、中国側のプロパガンダ(政治宣伝)や噂話、伝聞による架空の殺人をそのまま報告したことが分かっている。

韓国がいまだに賠償を求めようとする慰安婦問題についても、日本と韓国の間で賠償を取り決めた1965年の日韓基本条約のときには、議題にも上らなかった。その後、韓国と日本の左翼的な人々が「反日」で手を組み、でっちあげたものであることが分かっている。

「昔の日本は悪いことをした」と言えば、中国や韓国、北朝鮮は「反日」で国がまとまり、国内で抱える様々な問題への国民の不満をそらすことができる。また、ヨーロッパ諸国も、植民地支配でアジアの人々を奴隷のように扱ってきた負の歴史を覆い隠すことができるし、アメリカも都市への無差別爆撃や広島・長崎に不要な原爆を落とし、数十万人の日本人を殺した罪を正当化できるという構図がある。

現在、こうした誤った歴史認識が世界を支配しているわけが、日本人は今、正しい歴史認識を持ち、世界に発信するとともに、中国、韓国、北朝鮮、そして欧米諸国にも「歴史問題で反省すべきは、あなたたち自身である」と叱ってやらなければいけない。それは、日本の国益を守るという枠組みを超え、これからの「国際的な正義」を構築する上で、欠かせないポイントである。(格)

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2012年12月号記事 ふとどき国家の叱り方! サムライの国よ、目覚めよ

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=5053

2013年1月18日付本欄 【そもそも解説】南京大虐殺「日本兵が30万人を虐殺」は本当にあったのか

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=5476

【参考書籍】

幸福の科学出版HP 『従軍慰安婦問題と南京大虐殺は本当か?』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=824