2012年6月号記事

ワシントン発
バランス・オブ・パワーで読み解く
伊藤貫のワールド・ウォッチ

(いとう・かん)

国際政治アナリスト。1953年生まれ。東京大学経済学部卒。米コーネル大学でアメリカ政治史・国際関係論を学び、ビジネス・コンサルティング会社で国際政治・金融アナリストとして勤務。著書は『中国の核戦力に日本は屈服する』(小学館)、『自滅するアメリカ帝国』(文春新書)など。

国際政治はバランス・オブ・パワー(勢力均衡)から逃れることはできない。アメリカの退潮、中国の台頭、北朝鮮の核武装──。日本の置かれた立場は確実に不利に傾いている。日本が主体的にパワー・バランスをつくり出すために、国際情勢をどう読み解けばいいのか。

第2回

中国は10年以内に米軍を東アジアから追い出そうとしている

──米大統領選はオバマ対ロムニーの対決となりますが、オバマ外交も厳しい批判の的になる。

外交政策の方向性が明確でなく、中東、アジア、ロシア等、手詰まりになっているものが多いのです。「アラブの民主化」では中東に親米政権をつくることに失敗し、再びロシア大統領になったプーチンは有名なアメリカ嫌い。最近の北朝鮮に対する宥和政策は明白な失敗だったし、軍事介入を続けるパキスタン・アフガニスタン両国との関係も悪くなるばかり。 アメリカ外交にはよいところがない状態です。