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中国の電気自動車(EV)メーカー・比亜迪(BYD)のメキシコ工場建設計画が、トランプ米政権の関税政策で頓挫しています。

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BYDは2024年にEVの年間販売台数で米テスラを抜くなど、世界シェアを急拡大させて注目を集めています。同社はタイ、インドネシア、パキスタン、トルコ、ハンガリー、ブラジルで年間20万台以上を生産できる工場を建設するなど、生産拠点の拡大を図ってきました。

23年にはメキシコに6億ドルを投資し、年間15万台の生産能力を持つEV工場を建設する計画を発表。中国は直接アメリカに輸出するよりも、メキシコでつくる方がより安い関税で輸出できるため、中国にとっては魅力的な生産拠点です。メキシコで生産される自動車の約80%は中国製で、完成品はアメリカに輸出されています。

一方のメキシコ側も、BYDの工場建設で約1万人の新規雇用が生まれ、主要輸出産業であるEV市場の拡大で自国の経済的価値が高まり、新たな投資を呼び込めるといった経済的な恩恵を期待していました。

これに対し、トランプ大統領は前回の大統領選の期間中から、「中国によって米国販売の自動車を生産する大規模工場がメキシコで建設されようとしている」と激しく非難してきました。就任後は一連の関税政策でメキシコへの圧力を強めています。その結果、メキシコ政府は中国企業との距離を取り始め、BYDの新工場建設を拒否。BYDの李柯副社長は7月、「自動車産業に重大な影響を与える地政学的問題」を理由に建設計画を無期限延期する意向を示しました。

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