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独情報機関の連邦憲法擁護庁(BfV)がこのほど、今年2月のドイツ総選挙で躍進した右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」を「右翼過激派」だと認定し、物議を醸しています。
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ドイツでは、不法移民の犯罪が増加し、経済も停滞する中、左傾化が進む既成政党に対する不満が高まっており、その中で反移民などを掲げるAfDは急速に党勢を拡大しています。2月に行われたドイツ総選挙で、AfDは躍進し、152議席を獲得して第2党に躍り出ました。4月の世論調査では、第1党のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)を支持率で逆転し、初めて首位に立ちました。
一方、政府や主要メディアは、AfDは排外主義政党であり、「極右」「ナチスを肯定している」などとレッテルを貼り、批判し続けてきました。
こうした中、連邦憲法擁護庁は「民族・血統主義的な見方は人間の尊厳を侵害している」として、AfDを「右翼過激派」と認定。AfDが掲げる反移民や反イスラムなどの主張が、「難民や移民への継続的な扇動が偏見や恨み、恐怖を助長している」とし、「自由民主主義の基本秩序と相いれない」と結論付けました。
AfDはこれまでも「過激派の疑いがある」として監視対象でしたが、今回の認定により、内部協力者の活用や通信傍受など、当局による諜報活動が強まることになります。かねてより連邦議会(下院)ではAfDの政党禁止論があり、一部の地方政府からも「禁止手続きを速やかに開始すべきだ」との声が上がっていることから、今後、党の活動禁止を求める声が増えることは必至だとみられています。
AfDは認定に対し、「連邦憲法擁護庁の決定はドイツの民主主義にとって深刻な打撃だ」と反発し、提訴しています。
なお、認定をめぐっては、トランプ米政権の中からも批判の声が相次いでいます。JD・ヴァンス副大統領は「AfDはドイツで最も人気のある政党で、どの党よりもはるかに東ドイツをよく代表している。しかし、官僚たちはそれを今、破壊しようとしている」と指摘。マルコ・ルビオ国務長官は「これは民主主義ではなく、偽装された専制だ」と厳しく批判しています。
ドイツでは、過去にナチス・ヒトラー政権の台頭を招いた反省から、ヘイトスピーチや排外主義的な運動などに厳しい対応がとられてきました。AfDに関しても、テューリンゲン州代表のビョルン・ヘッケ氏が、「すべてをドイツ国民のために」というナチスのスローガンを叫んだとして、罰金刑が科されています。
ただ、こうした反ナチス感情があることを考慮したとしても、だからといって国民の支持を一身に集めて第2党に躍進したAfDを、政府やメディアが"極右"扱いして排除しようとする動きは明らかに行き過ぎでしょう。長らく政権を担ってきた大政党の「政治的意図」が働いたと言われても仕方ありません。
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