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アメリカとウクライナの間で再び、不穏な緊張関係が走っています。アメリカが提示した和平案に後ろ向きの態度をとるウクライナに対し、トランプ大統領は23日、「ロシアは応じる用意がある。ウクライナのゼレンスキー大統領と合意する方が簡単だと思っていたが、今のところ、より難しい」と述べ、ウクライナが交渉の障害になっていると痛烈に批判しました。

《詳細》

トランプ氏が大統領就任から間もなく100日を迎えようとする中、アメリカは懸案事項となっていたウクライナの領土の扱いについて、双方に「最終提案」を示しました。

米ニュースサイト・アクシオスによると、1ページの文書には、「アメリカはロシアが2014年に編入したクリミア領を承認する」「ロシアが占領するウクライナ東・南部を非公式に認め、現在の戦線で凍結する」「ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を認めない」「ウクライナへの『強固な安全保証』として、平和維持軍のウクライナ駐留を認める」「アメリカは14年以降に科したロシア制裁を解除する」と明示されているといいます。

これらは、ウクライナの停戦を掲げて選挙に勝利したトランプ氏が「アメリカの判断」として、ロシアのクリミア領有を認め、それに端を発する制裁を解除し、ウクライナ危機の原因であるNATOも拡大しないといった理屈であり、他国がとやかく言う内容ではありません。つまり、ウクライナ側の事情で認めようが認めないが、「アメリカはこの線で話を詰める」と意思を示した形です。

また英紙フィナンシャル・タイムズは、ロシアのプーチン大統領が、ウクライナの4州編入を憲法に明記しているにもかかわらず、支配していない地域については手を引くことを意味する「現在の戦線での停戦」をアメリカに提案したと報じ、領土問題で一定の譲歩を示したとされています。

一方、領土を奪還する力がないにもかかわらず、ゼレンスキー氏は「クリミア占領は認めない」と従前の主張を繰り返し、トランプ氏を批判。勝ち目のない戦いを続けても、さらなる領土と人命を失う結果を招くとみられるゼレンスキー氏に対し、トランプ氏は、「(クリミアは)数年前に失われ、議論の対象ですらない。ロシアとの和平交渉に極めて有害だ」「ゼレンスキー氏のような扇動的な発言のせいで、この戦争の解決が非常に困難になっている。彼には誇れるものが何もない!」などと述べ、ゼレンスキー氏が交渉の障害になっていると強調しました。

米ホワイトハウスのレヴィット報道官は、「大統領はいら立っている」「大統領は我慢の限界に近づいている」と記者団に話し、ヴァンス副大統領は、「今はもう彼らが受け入れる時であり、そうしなければアメリカは手を引く」と警告しています。

ウクライナメディアは、和平案を漏らしたのは「ウクライナ政府」と断じ、アメリカが仲介から撤退すれば、ウクライナは今後さらなる苦境に立たされ、今以上の譲歩を迫られる可能性があると悲観的に報じています。

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