全国公開中

《本記事のポイント》

  • 常に監視され、違反行為が減点対象となる近未来
  • 失う前に気づくべき「自由の価値」
  • 自由の根源にある宗教と信仰

本作は、監視されることが当たり前になりつつある近未来社会の中で、急速に失われていく自由の価値と尊さに気づいた高校生たちを描いた青春映画だ。気ままに生きていた高校生たちが、空気のように溢れていた自由の、かけがえのない尊さに目覚めていく様子がみずみずしく描かれていて、特に10代にはオススメである。

ユウタとコウは幼馴染で大親友。いつもの仲間たちと音楽や悪ふざけに興じる日々を過ごしている。高校卒業間近のある晩、こっそり忍び込んだ学校で2人はとんでもないいたずらを仕掛ける。

翌日いたずらを発見した校長(佐野史郎が熱演)は激昂し、学校に四六時中生徒を監視するAIシステムを導入する騒ぎにまで発展。この出来事をきっかけに、コウは、それまで蓄積していた、自身のアイデンティティと社会に対する違和感について深く考えるようになる。その一方で、今までと変わらず仲間と楽しいことだけをしていたいユウタ。2人の関係は次第にぎくしゃくしはじめ……。

常に監視され、違反行為が減点対象となる近未来

特に映画では言及されていないが、劇中に描かれた監視システムは極めて中国的なものだ。

主人公たちの高校に導入された監視カメラは、AIによって校則違反がモニターされ、減点がカウントされていく仕組みになっている。そして一定の点数に達すると、罰則として掃除などの奉仕活動が課されるようになっているのだ。

これは現在、中国において、共産党政府が全国民の社会的信用をスコア化してランク付けを行い、ランクに応じてメリットやデメリットの付与を行っている社会信用システムそのものである。共産党政府が決めた一律の価値観によってランク付けされ、評価が低くなると、ローンが組めなくなったり、ホテル宿泊が拒否されたりするなど、様々なデメリットを被る仕組みである。

ジョージ・オーウェルのディストピア小説『1984』に描かれた、常に監視され続けている管理社会を彷彿とさせるが、一律の価値観によって方向付けされる姿は、まさに飼い慣らされた"動物人間"そのものである。

こうした中国の「AI全体主義」について、幸福の科学大川隆法総裁は『メシアの法』で次のように指摘している。

マスクをしていない人とかだったら、ドローンで顔を認識されます。ドローンに写真を撮られたら、それで逮捕がそのあとに来るわけです。そして、どこかの収容所に連れていかれたら、家族もその人がどうなったかは分かりません。こんなことが起きるわけです。これは、"一定のレベル"を超えている可能性が高いと思います。人権侵害になる可能性は高いでしょう

映画では、顔認証システムを使って、警察が本人特定を一瞬で行う様子や、国民一人ひとりに背番号が割振られている様子なども描かれている。

中国の属国と化し、強圧的監視社会になり果てた日本──。それは、決してありえない話ではない。そうならないためにも、監視社会の入り口になり得るマイナンバーカードや、街に溢れた監視カメラのプライバシー侵害の可能性などのデメリットについては、よく知っておく必要があるだろう。

失う前に気づくべき「自由の価値」

映画では、学校に導入された監視カメラシステムが、自分たちの自由を奪い、人間としての尊厳を失わせるものであることに気づいた生徒たちが、導入を決めた校長に直談判をするところがクライマックスになっている。

中でも自分の退学処分と引き換えにして、学校の監視カメラ撤廃を実現させるユウタの姿には、自由の価値に目覚めた人間の颯爽とした清々しさが感じられる。

自由が成立する条件について、大川隆法総裁は『自由・民主・信仰の世界』の「まえがき」で次のように指摘している。

『自由』が真に成立するためには、『チャンスの平等』と『公正な処遇』『成功せし者の騎士道的責任感』が伴う。人の幸福のためには、刑務所の中の劣悪な平等よりも、意志と力で未来を切り拓いていけるチャンスの平等的自由が必要である

統治者が決めた一方的なルールの中で生きることに飼い慣らされないためにも、自由の領域が徐々に狭められていくことに対して、気づいた者が声を上げる事はとても大切だ。そのためにも、独立自尊の精神を持って、自分の意志の力で人生を切り拓いていくことは、これからの時代、何よりも大切なものだろう。

自由の根源にある宗教と信仰

映画のラストでは、かけがえのない青春のひとときを共に過ごしてきた高校生たちが、それぞれの道を歩んでいく姿が哀惜をこめて描かれている。こうした青春の一コマも、自由という価値がこの社会で共有されているからこそ実現するものだ。

そして、その自由とは、欧米社会において、プロテスタントの信仰者たちが迫害の中にあって信教の自由を守り抜いたことにより、社会的価値として定着したものであることは、決して忘れてはならないだろう。

人々が神仏の子であると考える『信仰』こそ、基本的人権が成立する基礎である」(『自由・民主・信仰の世界』より)

中国的な強圧的監視社会と同じような国に日本が劣化していかないようにするためにも、自由の根源にある宗教と信仰の価値が改めて認識されなくてはならない。そして、「神仏の子」としての自覚が、未来社会の価値基盤として、しっかりと確立されなければならないことは言うまでもない。

迫りくる監視社会の息苦しさを描いたこの青春映画は、将来ある日本の若者たちが、自由というかけがえのない価値を守るために、今、何をなすべきかを考えるヒントにもなるのではないだろうか。

 

『HAPPYEND』

【公開日】
全国公開中
【スタッフ】
監督:空音央
【キャスト】
出演:佐野史郎 ほか
【配給等】
配給:ビターズ・エンド
【その他】
2024年製作 | 113分 | 日本・アメリカ合作

公式サイト https://www.bitters.co.jp/HAPPYEND/

【関連書籍】

メシアの法

『メシアの法』

大川隆法著 幸福の科学出版

幸福の科学出版にて購入

Amazonにて購入

自由・民主・信仰の世界

『自由・民主・信仰の世界』

大川隆法著 幸福の科学出版

幸福の科学出版にて購入

Amazonにて購入

【高間智生氏寄稿】映画レビュー

過去記事一覧はこちら