アジア太平洋交流学会会長・目白大学大学院講師
澁谷 司
(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~05年夏にかけて台湾の明道管理学院(現・明道大学)で教鞭をとる。11年4月~14年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20年3月まで、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。
中国の中央政法系の5大機関(中央政法委員会、最高人民法院、最高人民検察院、公安部、司法部)は6月21日、「台湾独立強硬派」の国家分裂行為や国家分裂扇動行為への処罰に関する意見」(以下、「意見書」。全部で22条)を共同で発表した(*1)。
(*1)2024年6月21日付『中国瞭望』
台湾への法的圧力強める中国当局
この「意見書」は「反国家分裂法」、刑法等の法律に基づき、「台湾独立強硬派」による「国家分裂罪」および「国家分裂扇動罪」の有罪判決基準および手続について、具体的に規定している。
「国家分裂罪」が適用される具体的な行為は以下のものとなる。
(1)台湾独立機関の設立
(2)台湾独立の是非を問う住民投票の実施
(3)台湾の国際機関への加盟促進
(4)教育、文化、歴史、報道の分野で台湾が中国の一部であることを権力でむやみに歪曲・改竄
(5)両岸関係の平和的発展と祖国統一を支持する政党・団体・個人の弾圧
「意見書」発表に伴う記者会見で、中国公安部法務局の孫萍・副局長は、分離独立罪の最高刑は死刑であり、求刑期間は20年であると付け加えた(*2)。筋金入りの「台湾独立強硬派」たちの分離独立主義的行動が止まらない限り、彼らがどこに逃げようと、法に基づき終身追及される、という。
ある記者が、台湾人はこの「意見書」を心配し、両岸交流に参加することに懸念を抱くのではないかと質問した。これに対し、中国の台湾事務弁公室は、この措置はごく少数の「台湾独立強硬派」のみを対象としていると回答した。
これに対し、台湾の大陸委員会は、北京当局は台湾に対して全く管轄権を持たないと指摘している(*3)。そして、2300万人の台湾国民は中華民国憲法に基づき、(中国共産党が)奪うことのできない自由、民主主義、権利を享受していると強調した。
大陸委員会は改めて、台湾国民に中国への渡航の必要性を慎重に考えるよう注意喚起している。