《ニュース》

世界最大の二酸化炭素(CO2)排出国で、石炭火力発電所の国外での新設をしないと約束していた中国が、それを反故にする動きに出ていると、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが報じました(9日付日本語電子版)。

《詳細》

中国の習近平・国家主席は2021年9月に行われた国連総会で、今後は海外で新たな石炭火力発電プロジェクトは行わないと表明していました。同紙によると、中国企業は過去2年間に40件近い石炭火力発電所の建設計画を中止しましたが、他の約40件のプロジェクトは宙に浮いています。

ところが中国は、パキスタンやインドネシアで、発電所の新設計画を突如進める方針に転換。計画していた40件ほどのプロジェクトを全て実現させた場合、それだけでスペインを少し下回るほどのCO2を排出する規模になるといいます。

中国は巨大インフラ整備構想「一帯一路」を進めるに当たり、パキスタンに惜しみない支援を行っています。発電所を建設するグワダルには、人民解放軍が海外基地として利用すると見られる港湾も存在し、港湾開発には兆単位の資金を投じています。

同じく、発電所を建設するインドネシアは、希少金属であるニッケルの埋蔵量が世界最大と言われています。中国が国策として推進している電気自動車(EV)の製造において、ニッケルの確保は死活的に重要です(ニッケルの世界需要の6割を中国が占める)。ニッケル鉱石を処理する精錬所に電力を供給するため、発電所の新設が必要とされています。

中国は、自国にとって戦略的に利益がある石炭火力発電プロジェクトについては断念する意思はなく、国際公約を平気で無視しています。

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