2023年11月号記事

「大きな政府」に抵抗せよ

肥大化し続ける日本政府。だが、これ以上の問題の先送りは、痛みを伴うことになりそうだ。処方箋を探った。

味噌、しょうゆ、だし等、生活になくてはならない調味料や、チルド・冷凍食品、乾麺などを中心に、9月も食料品の値上げが続いている。

ロシア―ウクライナ戦争後、原油高や円安傾向の影響を受けて、輸入に依存する日本の9月の消費者物価指数は、前年同月比で3%上昇と、1991年8月以来、31年ぶりの上昇率となっている。

物価高倒産も相次いで発生している。実質賃金は減少傾向にあるため、生活は苦しくなる一方だ。

持続可能でない歳出増

こうした環境下で、政府の各省がどの事業にいくら使いたいかを示す24年度の概算要求が8月末に出そろった。過去最大の114兆円規模となり、年末にまとめる予定の予算案では、さらに数兆円規模が加わる見通しである。

23年度は、歳出の約3割にあたる約35兆円の新規国債発行で、足りない歳入を補ったが、来年度も国債に頼った歳出増となりそうだ。要するに歳出と比べて、税収があまりにも少ないのだ。そしてこれは海外からも「持続可能ではない」と見られている(*1)。

(*1)英経済誌「The Economist」は「金利上昇の局面では、何かが壊れる。この局面で、日本の危険は過小評価されており、悪夢のシナリオの場合、日本の膨大な政府債務の持続可能性に疑問が投げかけられる」という趣旨の警告している(22年11月5日"Japan's bond-market peg could snap")

近未来に日本を襲う悪夢とは

このままいけば、日本の政府債務は2030年には対GDP比で300%を超えるという試算もある。それは日銀の債務状況が極めて悪くなる未来だ。

大川隆法・幸福の科学総裁は、日銀は「金の塊を(資産として)七百兆円分持っているわけではないのです。持っているのは国債とか株とかであり、そういうものを買い集めているわけです。資金供給のために買っているわけなので、これが"紙切れ"になったら『終わり』なのです」と述べ、その時は「日銀も日本政府も『終わりのとき』が来る場合はある」と予言している(*2)。

近い将来、日銀の国債購入が「財政ファイナンス(補填)」と見られ、国債が市場で信頼を失い、国債価格が暴落。総資産全体の78%にあたる576兆円余りを国債で保有する(*3)日銀が債務超過になり、中央銀行といえども倒産に追い込まれる可能性もある。同時に為替相場で円売りが加速し、円も暴落するというシナリオが実現することも十分あり得るのだ。

そうした中で政府は22年10月末に物価高対策として総額39兆円、事業規模71.6兆円となる総合経済対策を閣議決定。さらにウクライナへの支援金、子供予算の倍増など、バラマキを続けている。

バイデン民主党政権の極左的政策を地でいくのが、実は「成長と分配の好循環」を謳う岸田流なのである。アメリカでは、民主党政権が債務を膨張させたことへの徹底的な批判が展開されているが、日本ではそのような論調が見られない。

先進国で最悪の水準にある政府債務。にもかかわらず与野党ともに放漫財政路線で、危機感が感じられない。ナチス登場前夜、経済政策において左右両極の接近があったと、ハイエクは述べている。つまり岸田政権の政策は、まるでヒトラー登場前夜のようで、日本は国家社会主義が完成する一歩手前にあるということだ。

この状況をどう見るべきか。日本経済に詳しい識者に話を聞いた。

(*2)大川隆法著『コロナ不況にどう立ち向かうか』(幸福の科学出版刊)
(*3)22年末時点。

 

 

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