《ニュース》
ロシア軍が昨年2月の開戦初日に強襲したウクライナのアントノフ空港の防衛態勢をめぐり、ウクライナ軍の主力部隊として守備についた国家親衛隊第4即応旅団が、戦争開始直前に、全く別の地域に配置され、空港防衛が手薄になったと、ウクライナのジャーナリストから疑問視する声が上がりました。
これを受け、ウクライナの政党「欧州連帯党」の議員が、管轄する内務省に当時の態勢を問い合わせたところ、同省はこのほど「データを破棄した」と回答し、波紋を広げています。
《詳細》
ロシアがベラルーシから軍用ヘリコプターに乗った空挺部隊を使って、アントノフ空港を襲撃する計画は、事前に、アメリカやウクライナ側も把握していたと報道されています。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルなどによると、米中央情報局(CIA)のバーンズ長官が2022年1月にウクライナを訪れ、「ロシアが空港を占拠し、キエフ攻撃の拠点として利用することを計画している」と警告を発したといいます。
そんな中、ウクライナ人ジャーナリストは開戦前に、空港を守備する国家親衛隊から襲撃計画を伝えられ、「当然、軍が迎撃するだろう」と期待したようです。というのも国家親衛隊第4即応旅団はまさに、空港を守るために発足し、榴弾砲や対空兵器などを充実させた戦闘能力の高い部隊だったからです。しかし、その部隊がなんと2月上旬に、一部の限られた戦力を残して、東部ルハンスク州に移動した結果、空港防衛が手薄になり、制圧されてしまったというのです。
ジャーナリストは、次の疑問を提起しています。
(1)なぜウクライナ政府は、ロシア軍の計画を知っていたはずなのに、防衛の要となる部隊を土壇場になって動かしたのか。
(2)なぜロシア軍は、ベラルーシからヘリで飛行する間にほとんど何の抵抗も受けず、空港にたどり着けたのか。ウクライナ政府は、その途中で対空兵器を置いて迎撃できた上に、そもそも空港を守る防空兵器がほとんどなかったのは何事か。
(3)もし第4即応旅団の全戦力がいたら、ロシア軍がキエフ近郊のブチャなどを制圧することにも手間取り、多くの国民が命を落とすこともなかったかもしれない。
その後、欧州連帯党の議員が、ジャーナリストの告発に従って、国家親衛隊を管轄する内務省に問い合わせたところ、同省は今月20日に「関連するデータは破棄した」と回答し、事実を明らかにしませんでした。
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